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[第3回] 社長!中小企業こそ株主総会は大事です!

2018年1月26日更新

元総務部長が語る「総務の仕事とは」

[第3回] 社長!中小企業こそ株主総会は大事です!

[河西知一氏(特定社会保険労務士)]

「まあ、いいか」は総務のNGワード

会社法では、株式会社は事業年度の終了後、一定の時期に定時株主総会を開催することを定めています。
(株主総会の招集)
第296条 定時株主総会は、毎事業年度の終了後一定の時期に招集しなければならない。
日本では上場企業の8割近く、非上場企業の4分の1近くが3月決算といわれていますので、毎年、6月中旬~下旬にかけて、多くの企業で定時株主総会が開かれます。その運営を担うのが、総務(あるいは法務)です。

とはいえ、じつは株式を公開していない中小企業の多くで、実際には株主総会が開かれていないという実態があります。これは、非常に危ない、しかも“もったいない”ことだと思います。

上場企業と違って株主のほとんどが社長やその親族、あるいは一部の役員や縁故者である中小企業の場合、

「わざわざ株主総会で決議をしなくても結果はわかっている」
「どうせ身内同士なのだから、改めて株主総会を開かなくても…」

そう考える気持ちもわからなくはありません。
しかし、そこで「まあ、いいか」と思っていては、総務として失格です。

会社がうまくいっているときは、一見、問題ないように思えるかも知れませんが、何かのきっかけで株主の間にトラブルが発生したらどうなるでしょう?
過去にさかのぼって取締役の選任や役員報酬についての決議がなかったと主張されたら、いったいどうなるでしょうか?

経営をめぐり、親子間・親族間で争いが起こった例は、それこそ枚挙にいとまがありません。そうなったときのリスクを真剣に考えれば、どんなに小さな会社であっても、株主総会は法律に則って適正に行う必要があります。

そのための知識を身につけ、事前準備から会場の設営、当日の運営までを取り仕切るのが、総務の仕事です。

総務は、アイデアマンであれ!

上場企業と違い、不特定多数の株主を対象とするわけではないので、株主総会といってもそう肩に力を入れることはありません。とはいえ、せっかく会社のステークホルダー(利害関係者)が一堂に会するわけですから、前年度決算や役員報酬などの決議だけで終わらせてしまうのももったいない話です。

そこで総務担当者に問われるのが、「企画立案能力」です。ゆめにも「去年やったとおりでいいだろう」などとは考えないでください。

株主総会は、経営者が株主に対して、前事業年度を総括し、新事業年度の決意表明を行う場です。特に、現在のように経営環境が激変しているとき、去年と今年が、今年と来年がまったく同じ、などということは考えられません。

総務担当者は知恵を絞って、「自社ならでは・今年ならでは」の特殊性をもった株主総会を立案していただきたいと思います。

小さな会社であれば、株主総会に全社員を招待するのも一法です。社員総会も兼ねた、株主と社員に向けた社長の決意表明の場にしてもいいでしょう。 食品メーカーであれば、新商品の試食会を開くのもいいかもしれません。株主を招いて、工場の見学会を行う会社もあると聞きます。

そして、必ず記念品を用意していただきたいと思います。たとえ赤字決算であっても、記念品のひとつぐらいは、絶対に必要です。
なぜなら、「記念品=今期にかける社長の決意」だからです。

株主総会で記念品をお渡しするということは、新事業年度にかける決意を形にして、株主の方に持って帰っていただく、ということに他なりません。

値段の多寡ではなく、どういう物にどういう形で決意を託すのか。そんなところにも総務担当者の企画力が試されます。

株主総会が社長のマインドを変えてゆく

最後に、出席者のほとんどが身内といっても、やはり株主総会は会社の一大イベントです。事前準備を万端に整え、公式な行事を執り行うという緊張感をもって臨んでいただきたいと思います。

株主総会は、和やかであっても、なあなあの雰囲気になってはいけません。特に同族会社の場合、ここがいちばん難しいところです。

取締役同士が親子や夫婦であったり、それぞれが株主であり、経営者でもあったりする同族会社では、公私のケジメが曖昧になりがちです。
取締役同士の意見対立が親子喧嘩になったり、あるいはその逆に身内の喧嘩が会社の経営に影響したりするケースも珍しくありません。

そうしたことが深刻なトラブルに発展しないように、ときには社長の公私に線を引き、取締役同士の関係を交通整理することも、総務担当者には求められます。

そこで、そんな同族中小企業こそ、株主総会をしっかりと開いてほしいと思います。なぜかといえば、株主総会は、株主として、経営者として、社長に会社の現状と将来を冷静に考えてもらう貴重な機会になるからです。

株主総会の席上、一堂の顔ぶれを見回しながら、

「もし、社長(自分)が死んだら、この会社は存続していけるか」
相続の結果、誰がいちばんの大株主となるだろうか」
「社長の財産相続人は、会社の後継者として相応しいか」

そうしたことを一瞬でも考えてもらえたなら、それだけで大成功です。

そんな株主総会にするためにも、招集通知の送達から会場の手配、出席者が座る位置や受付の場所、照明、マイクの音量、経営陣の服装のチェック、配布資料の作成等々に至るまで、総務担当者は緊張感をもって、粛々と準備・運営を進めていただきたいと思います。

株主総会を適法に行うことは、会社の事業存続に向けて社長のマインドチェンジを促し、それがすなわち、将来の事業承継リスクに備えることにもつながると考えます。
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執筆者プロフィール

河西知一氏(特定社会保険労務士)
大手外資系企業などの管理職を経て、平成7年社会保険労務士として独立後、平成11年4月にトムズ・コンサルタント株式会社を設立。労務管理・賃金制度改定等のコンサルティング実績多数。その他銀行系総研のビジネスセミナーでも明快な講義で絶大な人気を誇る。著書に『モンスター社員への対応策』(泉文堂)など。
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