• ヘルプ
  • MYページ
  • カート

専門家コラム Professional Eye

2018年2月9日更新

元総務部長が語る「総務の仕事とは」

[第5回] よい総務が企画するイベントは〝前例〟にしばられない!

[河西知一氏(特定社会保険労務士)]

備品管理からトラブル対応まで、総務の仕事は多岐にわたります。そのため、「便利な何でも屋」とみられがちですが、それは大間違い。元総務部長の人事・労務コンサルタントが、「総務の仕事」について語ります。

総務担当者は会社の「イベントプランナー」

ひと頃はすっかり嫌われていた「社員旅行」や「運動会」といった社内行事ですが、最近ではその意義が再評価されています。

考えてみれば、日常業務でパソコンを使うのが当たり前になり、社内の同僚との連絡も電話よりメールでやりとりするようになってくると、社員同士が顔をあわせたり、直接言葉を交わしたりする機会が大きく減ってしまいました。
「社員旅行」や「運動会」といった社内イベントが見直されるようになった背景には、そうした〝face to face〟のコミュニケーション不足を補う意味合いがあると思われます。

さて、イベントといえば、総務の出番です。総務は会社行事のイベントプランナーであり、プロデューサーであり、当日の運営責任者でもあります。

新入社員を迎える入社式や定時株主総会といった毎年必ず行うイベント、周年記念行事のように何年かに1度行うもの、さらに社員旅行や社員研修なども含めると、総務担当者がいかに多くのイベント運営に携わっているかがわかります。

ところで、人間というのは惰性に流されやすいもの。総務担当者として、同じようなイベントに何度も携わっているうちに、ついつい陥りがちなのが、

「前例どおりにやれば、間違いないだろう」

という考えでしょう。ですが、それではいけません。むしろ、

「何か問題はないか」
「もっといいやり方はないか」

そういう視点で、場合によってはその社内イベントを「やめる」という選択肢も頭に入れながら、常に〝観察する〟そして〝考える〟ことをあきらめないでいただきたいと思います。

時代はどんどん変化しています。人の嗜好も変われば、総務が備えるべき「リスク」の中身も変化しています。
ひと昔前であれば「職場の潤滑油」であった飲み会にしても、会社行事として行うときは注意が必要です。大量の飲酒は、部下や同僚へのアルハラ(アルコールハラスメント)、セクハラ、パワハラなどを誘発しかねないからです。

前例に学ぶことはあっても、真似ることで満足してはいけません。前回やったことはいったん白紙に戻して、一からイベントの企画立案に挑戦するところに、イベントプランナーとしての仕事の面白さがあるはずです。

絶対にやめてはいけない「管理職研修」

ところで、「やめるという選択肢も頭に入れながら…」とはいえ、なかには絶対にやめてはいけないイベントがあります。法律で開催が義務づけられている「定時株主総会」等はもちろんですが、それだけではありません。

筆者は、「管理職研修」こそ、絶対にやめてはいけないイベントだと考えます。

最近では、経費削減から社員教育をやめたり、縮小したりしている企業が増えているようです。新入社員研修は行っても、管理職研修を行わないという会社は、けっこう多いのではないでしょうか。

しかし、「会社を守る」という観点からすれば、管理職研修のほうが新入社員研修よりはるかに重要です。それは、上司によるパワハラを防ぐには、管理職研修でしっかり研修する以上に効果的な方法はないからです。

人間は弱い生き物です。小さな権力を握ったとたんに、普通のいい人だった社員が「パワハラ上司」に豹変することは、それほど珍しいことではありません。
また、職場の先輩後輩の関係が上司と部下の関係に変わったとたん、「先輩からのアドバイス」は「上司からの指示」となり、それを意識しないまま発した迂闊なひと言が、部下からしてみるとパワハラに感じられる、ということもあるでしょう。

上司からのパワハラによって部下がうつ病になるようなことがあれば、一大事です。最悪の場合、会社が「安全配慮義務違反」で訴えられることも覚悟しなければなりません。
社員のメンタルヘルス問題は、厚生労働省がいま最も力を入れているテーマのひとつなのです。

また、社内イベントから少し話がずれますが、

「多くの社員がやめたいと思っているが、やめることができないイベント」

というものもあるようです。たとえば社内儀礼のようなもの、バレンタインデーや盆暮れに贈る「お中元・お歳暮」などは、その代表例ではないでしょうか。

特にお中元やお歳暮は、日本人の文化・慣習に由来するものですので、筆者も一概に否定するものではありません。ですが、上司・先輩への贈答習慣には問題があると考えます。それは、人事評価への影響です。

とはいっても、既にそうした習慣があるのをやめるのは、なかなか簡単にできるものではありません。そこで総務が判断して、必要とあらば、

「社員間の贈答は、原則として禁止する」

といった社内通達を出すのもひとつの方法ではないでしょうか。

余談ですが、かつて筆者が勤務していた外資系企業では、「上司へ贈り物をする社員は仕事ができない」と見なされる傾向すらありました。

滅多にない会社行事こそ「事前準備」を怠らない

イベントを企画立案したら、次に大事なのが「事前準備」です。

屋外で実施するイベントであれば、悪天候に見舞われた時の代替案を用意しておく必要があるかもしれません。会場を借りるのであれば、冷暖房の効き具合からマイクの音量確認、時間がオーバーしないよう司会進行の時間配分などについても確認しておく必要があるでしょう。

周年行事のように、招待客を招いて何年かに1度だけ開くようなイベントの場合は、なおさら入念な事前準備が重要になります。

そうしたイベントのなかには、総務担当者が会社人生において、一度でも経験するか、しないか、というものもあります。そのひとつが、「社葬」です。
じつはこの「社葬」こそが、総務が事前準備しておかなければならない、最も重要な会社行事であります。

もし、社長やその親族、役員が亡くなったら、会社としてどう対応するか。
社葬にするのか、しないのか。
社葬の場合、香典は受け取るのか、受け取らないのか――。

とくに非上場企業の株主が亡くなったときには、株式の相続という問題も起こります。
「万が一」というときの手はずについて、社長と総務部長の間でふだんからしっかりと相談しておくべきでしょう。

そうしたことも含めて、イベントプロデューサーとして、危機管理の司令塔として、総務担当者は「事前準備」を怠らないことが大切です。
執筆者プロフィール
河西知一氏(特定社会保険労務士)
大手外資系企業などの管理職を経て、平成7年社会保険労務士として独立後、平成11年4月にトムズ・コンサルタント株式会社を設立。労務管理・賃金制度改定等のコンサルティング実績多数。その他銀行系総研のビジネスセミナーでも明快な講義で絶大な人気を誇る。著書に『モンスター社員への対応策』(泉文堂)など。