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専門家コラム Professional Eye

2018年3月9日更新

元総務部長が語る「総務の仕事とは」

[第9回] 総務は社長を〝諌める勇気〟と〝支える覚悟〟をもて

[河西知一氏(特定社会保険労務士)]

備品管理からトラブル対応まで、総務の仕事は多岐にわたります。そのため、「便利な何でも屋」とみられがちですが、それは大間違い。元総務部長の人事・労務コンサルタントが、「総務の仕事」について語ります。

社員数が1万人以下の会社に「社長室」はいらない

あなたの会社には「社長室」がありますか? もしくは、「社長秘書」はいるでしょうか?

会社によっては、社長と総務の間に「社長室」や「秘書」が壁のように立ちはだかり、「総務は雑用係だ」くらいに考えているところもあるようです。
しかし、

「総務が雑用係に甘んじている会社は危ない」

と、筆者は考えます。なぜなら、総務の最大の役割は、

「情報管理の司令塔として機能すること」

だからです(「よい総務」がよい会社を創る!参照)。この仕事は、社長室や社長秘書に代わりを勤めることはできません。

総務が情報管理の司令塔として機能するには、すべての情報は総務を経由しなければなりません。社長と総務の間に「社長室」や「秘書」が介在していると、いつしか社長の周りに情報を遮断する“塀”が作られてしまうものです。

数万人も社員がいるような大会社ならいざ知らず、社員数が1万人以下の会社であれば、社長室などいらないのではないでしょうか。

一方、総務の側にも、情報管理の指令塔として信頼されるための努力が必要です。
それには、社内の誰よりも情報の流れ・内容に敏感でなければなりません。上からの情報を流すのに一番適切な方法を研究したり、社内に散らばる情報を集めたり、管理したりするための労力を惜しんではいけません(〝広報マン〟として、総務には2つの大事な役目がある参照)。

もしも、あなたの会社の総務が雑用係という立場に甘んじていたら、早急に情報の流れを総務に取り戻し、情報管理の司令塔としての信頼を回復していただきたいと思います。

雑用を「情報管理」という視点から見直してみる

総務は雑用係に甘んじてはいけませんが、それは雑用を軽視することとは違います。それどころか、情報管理のために必要な雑用については、総務が率先して行うべきだと考えます。

たとえば、資産管理台帳は総務が作り、管理するべきです。そして1年に1回は、資産管理台帳に載っているものが、記載されたとおりの場所・部署で、きちんと活用されているかを確認してください。

特に人事異動があったときやプロジェクトの発足・解散時などには、人と一緒に資産も移動してしまうことがよくあります。人事や営業などの部門とも連携して、総務は常に最新の資産管理情報を把握するように努めます。

そうすることによって、資産の紛失や盗難を防ぐと同時に、使われずに遊んでいる資産をなくすことができるはずです。
決算時には経理と連携して、総務がもっている情報を減価償却の税務に役立てることができます。

このように、「記録をとる」ことは、総務がやるべき大事な情報管理のひとつです。問題は、何を・どのようにして記録として残すかでしょう。
そこが、総務の知恵の見せ所です。

最近、筆者が特にすすめているのが、「議事録を作る」ことです。

あなたの会社では、ミーティングと称して、1時間も2時間も参加メンバーが会議室から出てこないようなことはありませんか?
あるいは、新しいプロジェクトを企画したのはいいが、経営陣に情報があがらず、責任者が誰なのかもよくわからない状態で、いつの間にか何やら新しいことが始まっていた、などという経験はないでしょうか。

総務が総務として機能していない会社では、責任の所在も経緯もよくわからないまま、何となく新しい“イベント”が始まってしまう、というようなことがよくあります。
失敗なのか、成功なのかの判断すらつかないまま、貴重な時間とコストを費やした挙げ句、そのうちなし崩し的になかったことになる…そんなことすら起こります。

こんな事態に陥らないために、3人以上が参加する30分以上のミーティングは、必ず議事録を作ることを提案します。
議事録といっても、本格的なものである必要はありません。せいぜい10分以内で書けるような、簡単なメモでいいのです。たとえば、最低限、以下の3つを記録します。
  • ・ 日付
  • ・ミーティングの目的
  • ・参加メンバー
可能であれば、加えて「何が決まったか・決まらなかったか」を箇条書きにした議事録を作り、それらをすべて総務がファイルしておきます。
こうしておけば、何かイベントがあったとき、それが「何を目的に・誰によって・どういう経緯で」検討されてきたものかを社内で共有することができるはずです。

また、単に集まって話をすることが目的化してしまったような“ながら会議”を抑制する効果も期待できるでしょう。

社長が下した決断に総務が逆らってはいけない

こうして集めた情報は、総務から直接、社長に伝えます。

こと“情報”に関しては、会社のトップは社長室や他の役員を介してではなく、総務からすべての情報を受け取るべきです。そうすることによって、社長は社内のネガティブ情報から遮断されるのを防ぐことができます。

オーナー企業などでありがちなように思われますが、特に悪いニュースほど、

「社長には黙っておこう」

そんな空気が社員の間に蔓延していることがあります。
あるいは、社長に責任を負わせないために、あえて情報をあげるのは担当役員レベルにとどめるということもあるようです。

しかし、責任を取るのは社長の仕事です。そのためにも、総務は社長へあげる情報の流れを滞らせてはいけません。
何よりも、社長が的確な判断を下すために、必要なすべての情報を集め、伝える責任が総務にはあるのです。

もちろん、社長だって人間です。いつも100%正しい決断を下すとは限りません。総務担当者もまた、人間です。社長の決断に疑問を感じることだってあるでしょう。
仮に、社長の考えが明らかに誤りだと思えるときは、その根拠となる情報を示したうえで、社長を諌める勇気も総務担当者には必要です。

しかし、最後に決断を下すのは社長であって、総務ではありません。

総務担当者が社長の決断に不満を漏らしたり、逆らったりすることは、絶対にしてはいけないことです。そういうことをしていると、結局、上からも下からも信頼されなくなってしまいます。

社長からも社員からも信頼されない総務に、情報管理の司令塔としての役割が果たせるわけがありません。
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執筆者プロフィール
河西知一氏(特定社会保険労務士)
大手外資系企業などの管理職を経て、平成7年社会保険労務士として独立後、平成11年4月にトムズ・コンサルタント株式会社を設立。労務管理・賃金制度改定等のコンサルティング実績多数。その他銀行系総研のビジネスセミナーでも明快な講義で絶大な人気を誇る。著書に『モンスター社員への対応策』(泉文堂)など。