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2026年7月、障害者雇用の対象企業が拡大へ――人事担当者が確認すべきこと

2026年6月10日更新

人事労務News&Topics

2026年7月、障害者雇用の対象企業が拡大へ――人事担当者が確認すべきこと

[矢島志織(特定社会保険労務士)]
2026年7月から、障害者の法定雇用率が2.7%へ引き上げられます
これにより、障害者雇用の対象となる企業は「従業員40人以上」から「37.5人以上」へ拡大されます。
「うちは対象企業なのだろうか」「どのような業務を任せればよいのかわからない」「採用しても定着できるだろうか」など、さまざまな悩みを抱える人事担当者の方も少なくないのではないでしょうか。
障害者雇用は、単なる法令対応ではなく、多様な人材が活躍できる組織づくりという観点からも重要性が高まっています。
本コラムでは、過去記事の続編として、法改正のポイントと、人事担当者が準備しておきたい事項について解説します。
≫ 人事労務News&Topics :『2024年4月より障害者の法定雇用率が段階的に引き上げられます

(1)法定雇用率は2.7%へ

2026年7月1日から、民間企業の障害者法定雇用率が2.5%から2.7%へ引き上げられます。
  現行 2026年7月~
法定雇用率 2.5% 2.7%
障害者雇用の対象となる事業主の範囲 従業員
40人以上
従業員
37.5人以上
法定雇用障害者数は、企業全体の「常用労働者数の総数×法定雇用率」となります。
たとえば常用労働者75人の企業の場合、7月からは「75人×2.7%=2.025人」(小数点以下切り捨て)となり、2人の障害者を雇用する必要があります。
2026年6月までは「75人×2.5%=1.875人」(同)で、雇用すべき障害者数は1人です。

したがって、これまで以上に障害者雇用の確保とその準備が求められることになります。

(2)法定雇用率を下回るとどうなる?

障害者の雇用割合が法定雇用率を下回っている企業に対し、公共職業安定所は「障害者の雇入れに関する計画」の作成を命じることがあります。

「障害者雇入れ計画」の作成命令は、主に次のいずれかに該当する場合に発出されます。

実雇用率が全国平均実雇用率未満であり、かつ、不足数が5人以上の場合

実雇用率に関係なく、不足数10人以上の場合

雇用義務数が3人から4人の企業であって、雇用障害者数0人の場合

雇入れ計画の作成命令の発出後、企業は2年間の「障害者雇入れ計画」を作成し、その計画に沿って障害者の雇入れを進めることになります。
その後も計画どおりに雇入れが進まない場合には、労働局等による特別指導の対象となることがあります。
さらに改善が見られない場合には、企業名が公表される可能性もあります。
「未達成であればすぐに企業名公表」というものではありませんが、一定の基準に該当する場合には、行政指導の対象となり得るため、早めの状況確認と準備が重要です。

(3)障害者雇用納付金制度

障害者雇用納付金制度とは、常用労働者数101人以上の企業において、法定雇用率を達成していない企業は納付金を納め、法定雇用率を上回っている企業は調整金の支給を受ける制度です。

①障害者雇用納付金:法定雇用率未達成企業
不足1人について、月額50,000円を納付

②障害者雇用調整金:法定雇用率達成企業
超過1人について、月額29,000円を支給

ここで注意したいのは、納付金を納めれば、障害者の雇用義務が免除されるわけではないという点です。
また、納付金を納付しているからといって、前述の雇入れ計画の作成命令や行政指導の対象から外れるものでもありません。
つまり、納付金は「雇用義務の代替手段」ではなく、あくまで障害者雇用に伴う事業主間の経済的負担を調整するための制度と理解しておく必要があります。

(4)ここ数年で企業の考え方も変わってきた

これまで障害者雇用については、「法定雇用率を達成するために採用する」「不足分は納付金で対応する」といった考え方も少なくありませんでした。
しかし近年は、人材不足の深刻化、多様な働き方の普及、DXによる業務の細分化などを背景に、「雇用する障害者を戦力化する」という考え方へ変化してきています。

この変化は、大企業だけのものではありません。
中小企業においても、障害の有無にかかわらず、一人ひとりが能力を発揮できる職場づくりに取り組む例が増えていると感じます。

今回の法定雇用率の引上げをきっかけに、人事担当者は自社の経営層と「自社における障害者雇用の方針」を確認してみることも大切です。
これまで「納付金を納めればよい」と考えていた経営層であっても、人材不足や組織づくりの観点から、「障害者雇用を自社の戦略として考えたい」という意向に変わってくるかもしれません。
人事担当者だけで抱えるのではなく、経営課題の一つとして、社内で対話を始めることが重要です。

(5)障害者採用に向けて準備しておきたいこと

障害者採用に向けて、人事担当者が準備しておきたい主な事項は、次のとおりです。

①業務の整理をする

採用活動の前に、雇用する障害者の方に「どの仕事をお願いできるのか」を整理することが重要です。
たとえば、業務を細分化することで、「データ入力」「書類整理」「チェック業務」「定型的な事務作業」など、任せられる業務を切り出せる場合があります。
一方で、任せる業務が明確になっていない状態で採用すると、本人も職場も苦しくなります。何をどこまで任せるのかを採用前に整理しておくことで、入社後のミスマッチを防ぎやすくなります。

②職場の受入れ体制を整える

障害者雇用の成否は、採用できたかどうかだけで決まるものではありません。
むしろ重要なのは、採用後の定着です。
定着のためには、次のような受入れ体制を整えておくことや現場の理解が欠かせません。

・指導担当者の明確化

・相談できる窓口の整備

・困ったときに早めに相談できる関係性

・上司や同僚の理解

ただし、採用前にどれだけ社内で理解を進めていたとしても、実際に採用した障害者の方がどのような価値観を持ち、どのような関わり方を望んでいるかは、入社してからでなければわからない部分もたくさんあります。
現場で定着してもらうためには、制度や体制を整えるだけではなく、本人と丁寧に向き合うことが重要です。

弊所のお客様の例ですが、先日、「初めて障害者を雇用したい」というご相談をいただき、一緒に準備を進めた企業がありました。
企業側にとっても初めての経験であったため、障害特性について一定の理解はしていたものの、実際にチームに馴染むまでは、「どのように声をかければよいのか」「本人に遠慮しすぎていないか」といった迷いがあり、現場ではかなり手探りの状態でした。
しかし、ご本人との会話を重ねるなかで、少しずつ「こういう言葉をかけてもらえると安心する」「このように伝えてもらえるとわかりやすい」という声が出てくるようになりました。
そうした言葉をきっかけに、現場との距離が一気に縮まり、今では組織の大切な戦力となっています。

障害者雇用において大切なのは、受入れ体制を整えることはもちろんですが、本人と向き合いながら、職場として一緒に調整していく姿勢ではないか、と感じています。
「義務だから雇用する」という発想ではなく、「多様な人材が力を発揮できる職場にするために、何を整える必要があるのか」という視点で、自社の障害者雇用のあり方を考えることも大切です。

今回の改正を、自社の組織づくりを見直すきっかけとして活用してみてはいかがでしょうか。
執筆者プロフィール

矢島志織氏(特定社会保険労務士)
社会保険労務士法人 志‐こころ‐特定社労士事務所 代表社員/ISO30414リードコンサルタント/学校法人産業能率大学 非常勤講師/健康経営エキスパートアドバイザー

SEとして人事系システム開発に従事後、中小企業や上場企業の人事部を経験し、勤務社労士を経て開所。豊富な現場経験を強みに、企業全体の労務リスクを分析し、人事労務DD、IPO支援、人事制度、就業規則の見直し等を行う。現場の声を聞きながら、人事労務セミナーや企業研修講師を行う等、多数の講演実績あり。著書として『労働条件通知書兼労働契約書の書式例と実務』(日本法令)、『IPOの労務監査 標準手順書』(日本法令)など。
志-こころ- 特定社労士事務所

連載「人事労務News&Topics」

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