パソコンや応接セットなど、事業用の資産を買うとき、多くの事業主の方が意識している言葉ではないでしょうか。
実はこの「30万円未満」、令和8年度税制改正で「40万円未満」となりました。
今回は少額減価償却資産の特例の概要と変更点、注意点を確認します。
■少額減価償却資産の特例とは? 基本を確認
少額減価償却資産の特例とは、事業用の固定資産を新たに取得した場合、単体で一定金額未満なら取得価額全額を税法上の経費にできる制度です。本来、10万円以上かつ使用可能期間が1年以上の固定資産は、複数年にわたって減価償却を行なわなくてはなりません。
しかし、この作業を中小企業が毎年行なうのは、かなりの事務負担です。
そこで取得価額がそれほど大きくない減価償却資産については、事業で使い始めた年あるいは事業年度で、取得価額の全額を必要経費あるいは損金の額として計上することが税法で認められています。
これが「少額減価償却資産の特例」です。
ただし、この特例には次の条件があります。
- 取得価額は10万円以上一定額未満
- 適用できるのは「青色申告をしている中小企業者等」のみ
- 取得しただけでなく事業用として使い始めた事実が必要
- 適用できるのは取得価額の合計額が300万円まで
- 主要業務で使う減価償却資産でないと特例を適用できない(副業的な貸付はNG)
ほとんどの事業者は「30万円未満」で覚えていることでしょう。
この「30万円未満」が、令和8年度税制改正で「40万円未満」となりました。
昨今の物価高を配慮されたがゆえの引き上げです。
■上限額「30万円未満→40万円未満」はいつからなのか
気になるのが上限額の引き上げのタイミングです。次のようになります。
| 取得時期 | 単体での上限金額 |
| 令和8年3月31日まで | 30万円未満 |
| 令和8年4月1日から | 40万円未満 |
※判定は税込経理ならば税込価格で、税抜経理ならば税抜価格で行なう
同じ35万円のパソコンでも、令和8年2月28日に購入したら通常の減価償却の対象です。しかし、令和8年5月1日に購入したなら、35万円を全額、個人事業主の必要経費か法人の損金の額に計上できます。
■少額減価償却資産の特例の注意点
上限額の引き上げは朗報ですが、一方で次の注意点があります。●「合計300万円以下」は変わらず
単体での上限額は上がりましたが「300万円」という購入額合計の上限額は変わりません。購入時は単体の上限額だけでなく、一事業年度あたりの購入額合計にも意識を向けましょう。
●従業員数要件は厳格化
改正では、購入額上限が緩和された一方、従業員数要件は厳格化されました。| 取得時期 | 事業年度終了時(個人は12月31日)の従業員数 |
| 令和8年3月31日まで | 500人以下 |
| 令和8年4月1日から | 400人以下 |
※保険業法に定める相互会社や投資法人などの特定会社の「従業員数300人以下」は変更なし
このほか「青色申告書を提出している」「法人ならば資本金の額または出資額が1億円以下」といった要件が求められます。急な事業拡大のケース、2期連続で法人税申告が期限後になったケースでは、念のため、申告前に事業主要件を確認したほうが安心です。
●申告書への記載を忘れずに
この特例は申告時に「適用を受けます」という意思表示が必要です。そのため、申告書の提出前に以下を確認しましょう。
【個人】…
青色申告決算書の3ページ目の「減価償却費の計算」欄の摘要欄に「措置法28の2」と書いたか
【法人】…
少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例に関する明細書(別表16(7))を添付したか
●償却資産の申告は必要
新年になると1月末までに償却資産の申告を行ないます。このとき、少額減価償却資産の特例の対象となる資産も申告しなくてはなりません。
「全額、税法上の費用に計上したから関係ない」と誤解されがちなので注意したいところです。

参照:「Q1-7 少額資産は申告の対象になりますか。」固定資産税(償却資産) |東京都主税局
※上図のうち「④中小企業特例」の「20万円以上30万円未満」は令和8年4月1日以降取得分につき「20万円以上40万円未満」となります。









