今回の改正では、労働条件の明示事項の追加や「同一労働同一賃金ガイドライン」の見直しなど、企業の実務にも影響する変更が行なわれます。
本コラムでは、実務担当者が押さえておきたい3つの改正ポイントについて解説します。
(1)雇い入れ時の「労働条件明示事項」の追加
現在、パートタイム・有期雇用労働法では、パートタイム・有期雇用労働者を雇い入れる際、通常の労働条件に加えて、「昇給の有無」「退職手当の有無」「賞与の有無」「相談窓口」の4項目を書面の交付などによって明示することが義務付けられています。2026年10月から、これらに加えて、「待遇の相違の内容・理由等に関する説明を求めることができる」旨を明示することが必要になります。
【労働契約書のサンプル】 「待遇の相違の内容・理由等に関する説明を求める」とは、たとえばパートタイム・有期雇用労働者が、「なぜ正社員と手当が違うのか」「なぜ自分には賞与が支給されないのか」など、待遇の違いについて会社に説明を求めることです。
この説明を求めることができる旨を労働条件明示の際にあらかじめ知らせます。
■「パートタイム・有期雇用労働法」の対象者とは?
本法律の対象となるかは、「パート」「契約社員」といった名称ではなく、実際の労働条件で判断します。具体的には、次の労働者が対象となります。
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・同一の事業主に雇用される通常の労働者と比較して、1週間の所定労働時間が短い労働者(短時間労働者) |
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・期間の定めのある労働契約を締結している労働者(有期雇用労働者) |
なお、今回の改正は、「新たに雇い入れる場合」だけではなく、「労働契約を更新する場合」も同様です。
■実務ポイント
実務担当者は、現在運用している「労働条件通知書」などの様式を確認し、2026年10月1日以降の雇い入れ時・契約更新時の労働条件明示に対応できるよう、あらかじめ改正内容を反映しておきましょう。あわせて、雇用区分の名称ではなく、「通常の労働者と比べて所定労働時間が短いか」「期間の定めのある労働契約か」という点から対象者に漏れがないかを確認しておくことも重要です。
なお、明示義務に違反した場合には、10万円以下の過料の対象となる可能性があります。
様式の見直し漏れがないよう注意しましょう。
(2)「同一労働同一賃金ガイドライン」の改正
2つ目は、待遇差が不合理かどうかを判断する際の考え方を示した「同一労働同一賃金ガイドライン」の改正です。今回の改正では、これまでの裁判例等を踏まえ、賞与、各種手当(退職手当、無事故手当、家族手当、住宅手当)、福利厚生(福利厚生施設、病気休職・休暇、夏季冬季休暇、褒賞)に関して、不合理な待遇差に関する考え方がより具体的に示されました。
以下では、そのなかから実務上、特に確認しておきたいものを取り上げます。
■賞与について
賞与には、労務の対価の後払い、功労報償、生活費の補助、労働意欲の向上など、さまざまな性質・目的が含まれることがあります。こうした賞与の性質・目的がパートタイム・有期雇用労働者にも当てはまるにもかかわらず、正社員との職務内容や責任の程度等の違いに応じた、均衡のとれた内容の賞与を支給しない場合には、不合理な待遇差と認められる可能性があることが明確にされました。
■家族手当について
労働契約の更新を繰り返しているなど、相応に継続的な勤務が見込まれるパートタイム・有期雇用労働者については、通常の労働者と同一の家族手当を支給しなければならないという考え方が、新たに示されました。そのため、「正社員にしか家族手当を支給しない」という制度になっている場合には、その理由を改めて確認する必要があります。
■住宅手当について
住宅手当については、その支給目的が「転居を伴う配置変更の有無」に応じて支給するものである場合、正社員と同様に転居を伴う配置変更があるパートタイム・有期雇用労働者には、同一の住宅手当を支給しなければならないとの考え方が示されました。つまり、「契約社員だから住宅手当は支給しない」という雇用区分だけで判断するのではなく、住宅手当の目的と、実際の配置変更の範囲等を確認することが重要です。
■夏季冬季休暇について
夏季冬季休暇についても、パートタイム・有期雇用労働者に対して、通常の労働者と同一の休暇を付与しなければならないという考え方が示されています。■実務ポイント
実務担当者は、まず自社で正社員のみに支給・付与している賞与、退職金、各種手当、特別休暇、福利厚生制度等を一覧にしてみましょう。そのうえで、それぞれの待遇について、なぜ正社員とパートタイム・有期雇用労働者とで取扱いが異なるのか、その理由を説明できる状態になっているかを確認しておきましょう。
(3)雇用管理の改善等に関する措置内容の改正
3つ目は、パートタイム・有期雇用労働者の雇用管理について、企業に求められる取組みがより具体的に示されたことです。たとえば、正社員との待遇差について説明する場合には、単に口頭で説明するだけではなく、
また、職務内容や成果等を公正に評価し、その評価を昇給等に反映すること、パートタイム・有期雇用労働者の意見を聴く機会を設けること、正社員転換制度や転換実績等の情報を周知・公表することなども示されています。
■実務ポイント
待遇差について、従業員から説明を求められてから対応を考えるのではなく、あらかじめ「何を根拠として待遇を決めているのか」を整理し、説明に使用できる資料を準備しておきましょう。(4)まとめ
2026年10月1日施行に向けて、実務担当者は、次の点を確認しておきましょう。|
・「労働条件通知書」等の様式に、今回追加される明示事項を反映する |
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・正社員とパートタイム・有期雇用労働者との間にある待遇差を洗い出し、その理由を説明できる状態にしておく |
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・待遇差の説明に使用する資料、人事評価・賃金決定、正社員転換制度の運用を確認する |
※参考
・厚生労働省
「同一労働同一賃金特集ページ」
・リーフレット
「パートタイム・有期雇用労働者に関するルールが変わります(令和8年10月1日施行)」










