これまで投資詐欺などの深刻な財産的被害を発生させる、いわゆる悪徳商法は、各種の個別業法や特定商取引法、消費者安全法による対応が図られてきました。しかし、個別業法による規制は無登録業者を行政処分の対象にできません。特定商取引法の規制は特定の類型の取引にしか適用されません。消費者安全法は重大な消費者被害を引き起こしている事業者に対して直接措置をとることができないため、財産分野の事案における消費者保護の対応には限界があります。
そして、悪質な事業者の場合は財産を隠匿・散逸する場合が多く、個々の消費者が裁判で勝訴しても民事執行による回収に結びつかないケースが多いのが実情です。消費者の被害回復や、それに向けた財産保全のために機能する制度が少ない、という問題もあります。
そうした問題への対策を、結論として、次のようにとりまとめています。
これらの提言から、適切な対策がとれるよう、主に消費者庁の権限拡大を求めていることがわかります。そのための消費者安全法の改正について、対象行為・要件などの詳細を検討することが適当、としています。
さらに、具体的な個別業法を前提とした悪徳業者に対する経済的不利益賦課制度(課徴金制度)や、消費者庁による破産手続開始申立てについても、引き続き検討を行なうことが適当としています。
消費者庁は、今後、各論点に応じて有識者等の研究会を開催し、引き続き議論を深めるとしていますが、2010年に定められた消費者基本計画では、2012年通常国会への法案提出を目指すとしており、今後もこのスケジュールに沿った動きがありそうです。