• ヘルプ
  • MYページ
  • カート

国家機密を対象とする「秘密保全法制」整備の機運高まる

政府が1月に発足させた秘密保全のための法制の在り方に関する有識者会議が、「秘密保全のための法制の在り方について」(報告書)をまとめ、秘密保全法制の早期整備を提言しました。
■ なぜ秘密保全法制が必要か

報告書では、わが国の利益を守り、国民の安全を確保するためには、政府が保有する重要な情報の漏えいを防止する制度を整備する必要があり、秘密保全に関する制度を法的基盤に基づく確固たるものとすることが重要である、と指摘しています。
秘密保全に関する現行法令では、防衛の分野での保全制度はあるものの、必ずしも包括的なものでないうえ、防衛以外の分野では制度自体がありません。
公務員には国家公務員法等で一般的な守秘義務が定められていますが、その抑止力も十分ではないこともふまえると、政府が保有する、特に秘匿を要する情報(特別秘密)の漏えいを防止することを目的として、秘密保全法制を早急に整備すべきであるというのです。
秘密事項として取り扱うべき事項は(1)国の安全、(2)外交、(3)公共の安全および秩序の維持、の3分野とし、さらに具体的事項を別表等で列挙し、指定行為でさらに限定・明確化するのが適当としています。

■ 特別秘密の管理

法制の対象となる特別秘密の範囲を明確に特定するために標記(標記が困難な場合は通知)を要件とすべきとしています。
また、特別秘密を取り扱う適性を有すると認められた者、真に必要のある者に限って取り扱わせること、管理責任を明確化すること、取扱者の保全意識を高めることが必要であるとしています。そこでリスクの程度を総合的に評価し、取り扱う適性を判断する「適性評価制度」の整備などが提言されています。

■ 罰則の強化

特別秘密の漏えい防止のためには、職責に応じた処罰を可能にするような刑を定めることが適当であるとしています。
「漏えい行為の処罰を業務者に限定する」「取得行為の処罰を窃盗、不正アクセス、暴行、脅迫等、犯罪行為等を手段とするものに限定する」など処罰範囲を必要最小限に抑えたうえで、法定刑の上限を懲役5年または10年とし、相当程度重いものとする観点から下限を設けることも検討に値するとしています。
あわせて、国民の知る権利等の関係では、特別秘密は情報公開法のもとで開示されるべき情報ではない(国民の知る権利を害するものではない)、正当な取材活動は処罰対象とせず取材の自由を害するものではない、としています。
この報告書を受け、政府は次の通常国会に秘密保持法案を提出する方針を打ち出しました。
ただし、一方で報告書は、「ひとたび運用を誤れば国民の重要な権利利益を侵害するおそれがないとは言えない」と指摘し、「政府はその趣旨に従った運用を徹底することが求められ、国民はその運用を注視していくことが求められる制度である」とも強調されています。
推進側からも運用に懸念がもたれている法制度だけに、具体的な法案の中身がみえてからの反発もありそうです。

企業実務サポートクラブとは?詳しくは資料ダウンロード