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年金消失問題を受け、給付減額や基金解散の基準を緩和か

厚生年金基金等の企業年金の資産運用は、平成9年以降、各基金が自己責任の下で自主的に運用を行なうことを基本原則としてきました。
ところが、資産運用の多様化・複雑化とともに、金融市場の変動幅は大きくなっています。経済金融情勢の悪化により、企業年金は厳しい財政状況が続き、特に厚生年金基金については、厚生年金の代行部分に必要な積立金をもたない「代行割れ基金」が4割を占めるほどにまで悪化しています。
AIJによるいわゆる「年金消失問題」の発覚は、企業年金制度の実態とリスクの深刻さを浮き彫りにしました。
そこで厚生労働省は「厚生年金基金等の資産運用・財政運営に関する有識者会議」を設置しました。資産運用規制と財政運営の両面からこれまでの施策を検証し、今後のありかたについて幅広い観点から議論を行なうことになったのです。
●資産運用規制

その主な検討事項として、資産運用規制面では、次のような項目が挙げられています。

・分散投資義務
ひとつの運用機関への集中投資を禁止し、リスクを分散しようというものです。
・運用体制の評価
企業年金の役職員の資質の向上、外部専門家の活用が想定されています。
・情報開示の徹底
事業主や加入者に対して、運用結果に加えてリスクやプロセスの開示も義務づけようというものです。

●財政運営の健全化

財政運営面では、次のような項目が挙げられています。

・OBの給付減額
これまで給付の減額には、前提として受給者(OB)の3分の2以上の同意が要件とされていました。そのため掛金引上げなど現役世代の負担が増えるなかでも、給付額の削減はあまり進んでいません。これを受給者の半数以上の同意で可能にするなど、基準を引き下げ、減額しやすくしようというものです。
・解散基準の緩和
現在は基金を解散するには、事業主と加入者の4分の3以上の同意が必要とされます。この基準を緩和して、解散しやすくしようというものです。
・予定利率の引下げ
給付に備え想定する運用利回り(予定利率)を引き下げる場合に必要とされる掛金の引上げを猶予しようというものです。有識者会議は6月までに結論を出し、厚生労働省は基準緩和を進めていく予定です。また、厚生年金基金の給付減額の基準見直しの結果は、大企業の確定給付企業年金にも適用される見込みです。

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