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インサイダー取引規制を強化、悪質なケースは個人名の公表も

金融庁が上場企業の公募増資をめぐって行なわれるインサイダー取引への規制強化策を検討しています。その一環として、金融審議会金融分科会に設けた「インサイダー取引規制に関するワーキング・グループ」が報告書をまとめました。
現行の規制では、インサイダー取引を引き起こす情報伝達行為については、教唆犯または幇助犯に該当し得るものの、特別な規制は設けられていません。
しかし最近は、上場企業の役員や従業員等(会社関係者等)から情報を得た者が違反行為を行なうケースが多く、また、上場企業の公募増資に際して、引受主幹事会社からの情報漏洩に基づくインサイダー取引事案なども生じています。
そこで、次のような規制強化の方針が打ち出されました。
●情報伝達・取引推奨行為に対する規制等

「取引を行なわせる目的」等で重要事実の情報伝達・取引推奨がなされてインサイダー取引等が行なわれた場合、その情報伝達・取引推奨を行なった会社関係者等も刑事罰・課徴金の対象とされます。
また、仲介業者に対しては、証券市場のゲートキーパー(門番)として公共性の高い役割を担っていることから、より実効性のある違反抑止策を設けるべきとしています。仲介業者に対する課徴金額の計算方法として、たとえば3か月分の売買手数料や、増資に係る売りさばきに関連した違反については引受手数料を含めることが挙げられています。
あわせて、仲介業者や機関投資家の運用担当者等による重大な違反行為があったときには、注意喚起のために個人名を公表するという抑止策が打ち出されています。

●「他人の計算」による違反行為に対する課徴金の見直し

資産運用業者が「他人の計算」=顧客の資産の運用等で違反行為を行なった場合には、運用報酬を継続的に得ることが可能であることを踏まえ、「一定期間(たとえば3か月)の運用報酬全体」を基準として、課徴金額を計算するとしています。
現行の計算方法では、「違反行為のあった月の対象銘柄の割合分の運用報酬」のみが基準なので、大幅な引上げとなります。

●近年の金融・企業実務を踏まえた規制の見直し

現行制度のもとでは株式公開買付の関係者(公開買付をされる企業の役職員やその情報を受け取った者)を、インサイダー取引規制の対象である「公開買付者等関係者」と認定できるとは限りません。そこで、そうした関係者が取引規制の対象者に当たることを明確に位置づけるなどの見直しを行ないます。
金融庁はこの報告書の方針をもとに具体的な罰則強化策をまとめ、金融商品取引法改正案の提出を目指すとしています。

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