2017年に民法が改正されて消滅時効の期間が見直されたことに伴い、労働基準法でも消滅時効についての検討が始まりました。
●民法の消滅時効の改正改正前の民法は、原則として債権の消滅時効は10年とされ、例外として、商事債権は5年、時給・日給制の賃金債権は1年などいくつかの短期消滅時効が設けられていました。
それが今回の改正により、権利を行使できることを知っている場合、5年に統一されました。
●労働基準法上の消滅時効一方、労働基準法上の消滅時効は、賃金債権が2年、退職金が5年、年次有給休暇請求権は2年と規定されています。
労働基準法は民法の特別法とされていますので、労働基準法の規定が優先して適用されます。このため、民法が改正されても影響はありませんが、賃金債権等の消滅時効についても5年に統一するべきとの声が挙がっています。
●検討会での論点厚生労働省の「賃金等請求権の消滅時効の在り方に関する検討会」では、以下のような論点を議論する予定です。
- ・賃金等請求権の消滅時効期間のあり方
- ・年次有給休暇請求権の消滅時効期間のあり方
- ・書類の保存期間、付加金等の規定のあり方
●延長された場合の影響たとえば、残業代の未払いがあっても、現在では2年までしかさかのぼって請求されませんが、これが5年になれば、企業の経済的リスクの増大につながることから、残業代未払いへの抑止力になると考えられます。
また、年次有給休暇についても、現在では40日(20日×2年)が最大であるところ、100日(20日×5年)にまで拡大されると、有給休暇の消化促進が加速すると予想されます。
検討会では、賃金不払残業の総額、年次有給休暇の取得率や取り残す理由などを勘案しながら審議を進めるとしています。
ことしの夏をめどに意見をとりまとめ、改正が必要となれば2019年にも改正案を提出したい考えです。
注目したい法改正の動向
国内の大手メーカーなどでは品質管理体制の不備が相次いで発覚していますが、経済産業省は工業標準化法(JIS法)に違反した企業の罰則を現在の上限100万円から1億円に引き上げることを決めました。
今通常国会に、改正案を提出する予定です。
法務省の法制審議会は、会社法改正の中間試案のたたき台を提示しました。主なポイントは、次の2つです。
- ・株主提案の議案数の制限
現在は、株主が提案できる議案数の制限はありませんが、他人の名誉を侵害したり困惑させたりする議案もあり、1人の株主が提案できる議案数を5~10に制限するとしています。
- ・上場企業の社外取締役設置の義務付けの是非
上場企業の社外取締役設置を義務化することについての是非が論点となっています。
パブリックコメントを経て今年度中に要綱案をまとめ、2019年の通常国会に会社法改正案を提出したい考えです。
食品の自主回収については、各自治体が条例などで事業者に報告を求めていますが、全国の情報をまとめて公表する仕組みがないため、消費者が把握しにくい状況でした。
そこで厚生労働省では、事業者が製造した食品等が食品衛生法に違反し、回収する際は、その旨を都道府県知事に報告し、都道府県知事は厚生労働大臣に報告しなければならないこととしました。
食品衛生法の改正案を、今通常国会に提出する予定です。
厚生労働省は、働き方関連法案のうち、時間外労働の上限規制と同一労働同一賃金の実施時期を、中小企業についてはいずれも1年延長することを決めました。これにより、残業規制は2020年度、同一労働同一賃金は2021年度からの実施となりそうです。
働き方改革関連法案は昨秋の臨時国会で審議される予定でしたが、衆院選の影響で今国会に持ち越しになっていました。
周知・準備期間を十分にとるための措置です。