厚生労働省は、厚生年金保険の要件などを緩和し、パートタイマーなど短時間労働者の適用対象を拡大する検討に入りました。
●現行の厚生年金加入要件
厚生年金に加入義務があるのは、週労働時間が30時間以上の人のほか、2016年10月からは、
- 週労働時間20時間以上
- 月額賃金8万8000円(年収換算で約106万円)以上(所定労働時間や所定内賃金で判断し、残業代等を含まない)
- 勤務期間1年以上の見込み
- 学生は適用除外
- 従業員501人以上の企業等(適用拡大前の基準で適用対象となる労働者の数で算定)
などの要件を満たす短時間労働者にも適用拡大されています。
また、2017年4月からは、前記1~4の条件のもと、500人以下の企業等については、労使合意に基づいて、厚生年金への加入が可能になっています。
●規模要件・賃金要件を緩和へ
厚生労働省としては、働きたい人が働きやすい環境を整えるとともに、短時間労働者について、年金等の保障を厚くする観点から、被用者保険(年金・医療)の適用拡大を進めるとしています。
一方で、年金財政の安定化を図るためにも、企業の規模要件や賃金要件を緩和して、適用対象を広げたい考えです。
前回の改正では賃金要件を月額7万8000円として改正案を提出したものの、国会の場で月額8万8000円に決着した経緯があります。
いまのところ、賃金要件を月額5万8000~6万8000円に引き下げる案が浮上していますが、紆余曲折が予想されます。
来年は5年に1度行なわれる財政検証の年に当たり、年金財政の健全性がチェックされます。厚生労働省は、検証結果を踏まえて来年9月までに改正案をまとめ、2020年度の法改正を目指します。
●小売業からの反発も
加入対象者が拡大されれば、働く側は老後の年金が増額されるメリットがありますが、保険料は労使折半となるため、企業の負担が重くなります。
このため、パートタイマーなど短時間労働者を多く雇用する小売業や中小企業などからの反発も予想されます。
注目したい法改正の動向
総務省はこのほど、地方公共団体が保有する個人情報の円滑な提供についての検討を始めました。
たとえば、市町村が介護事業者からの提案を受け、市町村が保有する介護に関するデータに係る、非識別加工情報を作成して提供すれば、
(1)高齢者の疾患や容態による特性の分析
(2)高齢者の容態像別のサービス利用状況の分析
などを行ない、その分析結果を用いて、ケアプランの開発・提供や介護予防事業の企画等が可能になるとしています。
来年4月には最終的なとりまとめを行ない、来年度の法改正を目指します。
環境省は、現在、世界的に問題となっているプラスチックゴミ等の対策を検討するための委員会を設置しました。ここでは、G7で採択された「海洋プラスチック憲章」に掲げられた事項や数値目標(法整備等)も含め、プラスチックの資源循環を総合的に推進するためのあり方について検討を進めるとしています。
今年度中に答申案をまとめる予定ですが、産業界からの慎重論も根強いため、具体的な削減数値などを打ち出せるかどうかは不透明です。
特許庁は、意匠権の存続期間を現在の20年から25年に延長する方向で検討しています。
意匠とは、物品あるいは物品の部分における形状・模様・色彩に関するデザインをいいます。
一度登録したデザインを長く使いたいという要望は以前から強く、来年の通常国会に意匠法改正案の提出を目指します。