短時間労働者に対する社会保険の適用範囲について審議していた有識者検討会は、このほど「制度のあり方としては企業規模要件を撤廃すべきである」との意見が示された報告書を公表しました。
以下、概要を見ていきます。
(1) 基本的な考え方
①適用拡大は、被用者でありながら国民年金・国民健康保険に加入している者に対して厚生年金や健康保険による保障が確保される
②労働者の働き方や企業による雇い方の選択において、社会保険制度における取扱いによって選択を歪められたり不公平を生じたりすることがないようにする
③適用拡大によって厚生年金の適用対象となった者は、定額の基礎年金に加え、報酬比例給付による保障を受けられるようになる
(2) 短時間労働者に対する被用者保険の適用範囲のあり方
①企業規模要件(現在は501人以上)については、本来的な制度のあり方としては撤廃すべきものであるとの位置づけで対象を拡大していく必要がある
また、事業者に対する負担の大きさを考慮したうえで、負担が過重にならないような配慮や支援措置が必要である
②労働時間要件(現在は週20時間以上)については、現行の基準を維持しつつも、慎重に検討する必要がある
③賃金要件(現在は8万8,000円以上)については、制度の見直しの緊要性の程度も念頭に置いて検討する必要がある
④勤務期間要件(現在は継続して1年以上見込まれる場合)については、事業主負担が過重にならないようにするとの趣旨や、実務上の取扱いの現状を踏まえて要件を見直す必要がある
⑤第3号被保険者については、働き方やライフスタイルの選択を阻害しない制度とするため、まずはさらなる適用拡大を通じて、ある程度働く短時間労働者については被用者保険に加入する形を目指しつつ、制度のあり方についての将来像を検討していく必要がある
厚生労働省としては、さらに社会保障審議会年金部会で議論を深め、来年にも関連法案の提出を目指すとしています
注目したい法改正の動向
現行のルールでも、機械や在庫、売掛債権などを担保に金融機関が企業へ資金を融資するABL(動産担保融資)という手法があります。
ただし、この場合では担保の優先順位のルールなどが明確でないため、トラブルが起きることがありました。
そこで法務省は、機械や在庫などの動産を対象とした新たな担保権についての議論を行なっています。
早ければ来年にも民法の改正について法制審議会に諮り、法制化を進める方針です。
大手就職情報サイト「リクナビ」が内定辞退率の予測を顧客企業に販売していた問題で、厚生労働省は採用時の企業の情報提供のあり方の見直しについて検討を始めました。
厚生労働省の「今後の若者雇用に関する研究会」では、適切な情報提供等による適職の選択を促進させるため現行の制度を見直し、若者が円滑にキャリア形成を行なえる環境整備を強化していく、としています。
厚生労働省では、来年5月に報告書をまとめ、労働政策審議会での議論に進めたいとしています。
文化庁はことし3月、海賊版と知りながら漫画や雑誌をダウンロードすることを禁止した改正著作権法の国会提出を予定していましたが、対象が広すぎると議論が巻き起こり、提出が見送られた経緯があります。
このほど、文化庁は著作権法についての議論を再開、パブリックコメントを広く募集し、改めて対象範囲についても議論する予定です。
多くの意見を聞きながらコンセンサスを得て、改正案の提出に漕ぎ着けたい考えです。