法制定からおよそ20年がたち、IT基本法の抜本改正の機運が高まっています。
IT基本法の正式名称は「高度情報通信ネットワーク社会形成基本法」といい、高度情報通信ネットワークの整備、情報リテラシーの向上、電子商取引の促進等の施策で日本が世界最先端のIT国家になるべく2001年に施行され、これをもとにサイバーセキュリティ基本法等の関連法が整備されてきました。
しかし、新型コロナウイルス感染症拡大により社会が変容するなか、多様な分野でデジタル化への課題が浮き彫りになってきています。
●デジタル庁の創設
そこで、行政の縦割りを打破し、大胆に規制改革を断行するための突破口としてデジタル庁が創設されました。
菅義偉首相はデジタル庁の創設によって、国や自治体のシステムの統一・標準化、マイナンバーカードの普及促進、各種給付の迅速化やスマホによる行政手続きのオンライン化、民間や準公共部門のデジタル化支援、オンライン診療やデジタル教育などの規制緩和などによって、国民が望むサービスを実現し、デジタル化の利便性を実感できる社会をつくっていきたいと述べています。
●基本方針が年内に
年末には基本方針を定め、次期通常国会においてそれらの関連法とともにIT基本法の抜本改正を行なうとしています。
その具体的な動きとして、10月に入ってデジタル改革関連法案ワーキンググループおよび作業部会が設置され、2回の会合が開かれました。
ちなみに第2回の会合では、デジタル社会が目指す次のような方向性案が示されています。
・①オープン・透明、②公平・倫理、③安全・安心、④継続・安定・強靭、⑤社会課題の解決、⑥迅速・柔軟、⑦包摂・多様性、⑧浸透、⑨新たな価値の創造、⑩飛躍、の10原則を日本のデジタル社会形成の大方針とする
・官民連携を基本とし、国はデータ利活用や連携基盤整備等の多様な国民のニーズに応えるサービス提供に必要な環境整備を行ないつつ、行政自らもユーザー視点に立った新しいサービスを提供する
11月中に2回の会合が行なわれ、そこで「社会全体のデジタル化の将来像とそれを実現するIT基本法改正及びデジタル庁についての考え方」を決定するというスケジュールが示されています。
注目したい法改正の動向
厚生労働省の労働政策審議会雇用環境・均等分科会で、男性の育休取得促進についての議論が進められています。
今回の具体的な検討項目として、子の出生直後の休業の取得を促進する枠組み、妊娠・出産(本人または配偶者)の申出をした労働者に対する個別周知および環境整備等が示されています。
今後、この議論を受けた育児介護休業法の見直しが予想されます。
小泉進次郎環境相は再生可能エネルギーへの転換の促進を目的として、国立公園内に発電所設置を促す方針を示しています。それに関連し、地球温暖化対策推進法などの改正法案を来年の通常国会に提出する意向を明らかにしています。
政府は、登録文化財制度の保護対象に地域の祭りなどの無形文化財と無形民俗文化財を加えて文化継承の会文化財分科会企画調査会で文化財保護法改正についての議論を始めています。
法制審議会少年法・刑事法(少年年齢・犯罪者処遇関係)部会は、罪を犯した18歳、19歳に対する処分の変更のほか、懲役刑と禁錮刑を「新自由刑」に一元化するなどの見直しに関する要綱をとりまとめました。これを受けて来年の通常国会への改正法案の提出を目指しています。