自衛隊基地や原子力発電所など、安全保障上重要な施設の周辺で、実態が不透明な土地取引が行なわれていることについて不安の声があることから、骨太方針2020では「安全保障等の観点からの土地利用・管理等の在り方」が検討課題として示されていました。
●有識者会議を設置
この課題を議論する場として「国土利用の実態把握等に関する有識者会議」が設けられました。
第1回めの会合では、議論すべき点として、次のような項目が示されています。
(1)現状と課題
・日本国内の土地取得事案について、安全保障等の観点からどのような懸念があるか
・なぜ国民の間に懸念が生じるのか
・安全保障等の観点からの土地利用・管理等に関する我が国の制度には、どのような課題があるか
(2)個別の論点
・対象の候補となる施設や地域
・対象の候補となる土地等について、考えられる措置
・土地利用・管理等の在り方と私権との関係
・土地利用・管理等の在り方について、国際法との関係で考慮が必要な点
会議参加者からは、
「投資の呼び込みは重要であり、外国資本等だから問題とするのではなく、守るべきものは何か、自由な経済活動の対象外とすべきものは何かといった点を整理したうえで、内外無差別の形で検討すべき」
「規制の方法として、利用規制と取得規制を併用する方法があり得るが、どちらかに偏ることなくバランスをとることが必要である」
などの意見が出ました。
●私権制限をどこまでするか
土地の所有・管理に関する法律は不動産登記法のほか、外国為替及び外国貿易法、地方税法、国土利用計画法など多岐にわたります。
有識者会議は、WTOのサービス貿易に関する一般協定の国籍に基づく差別を認めないとする条文の例外規定との整合性をどう図るか、また、過度な私権制限にならないようにするにはどのような制度が現実的だといえるのか、論点を整理して2020年中に提言をまとめる予定です。
これを受けて、政府は次の通常国会に関連法案の提出をめざすとしています。
注目したい法改正の動向
政府はマイナンバーカードの管理システムを運営する地方公共団体情報システム機構の監督体制の強化に取り組む考えを示しています。
そのための地方公共団体情報システム機構法等の関連法の改正が検討されます。
経営の厳しい地銀の再編を促すための支援策として、金融機能強化法を改正し、合併・経営統合を行なう地方の金融機関に補助金を支給する「資金交付制度」の創設が予定されています。
河野太郎規制改革相は住民票の写しの交付請求など行政手続きで求められていた「認印」の全廃を発表しました。認印を求める根拠法のあるものについては一括法案で改正する方針が示されています。
特許庁は海外事業者による偽ブランド品等の販売に対する規制強化を検討しています。そのための商標法等の改正案のとりまとめに向けて、産業構造審議会知的財産分科会は、個人に対して直接販売・送付するケースへの対策が急務という方針案を示しています。
総務省の公共放送の在り方に関する検討分科会が、公共放送と受信料制度に関する論点整理案をとりまとめ、今後の方向性を示しています。
繰越剰余金を受信料の引下げに充当することを義務づける制度や、未契約者に対する割増金制度の導入が示された一方、中間持株会社制の導入、テレビ設置の届出義務化等は見送られることになりました。