「新たな日常」に向けた取組みを先取りし、長期視点に立った企業の変革の後押しを目的として、「産業競争力強化法等の一部を改正する等の法律案」が閣議決定されました。その中身を見ていきましょう。
●産業競争力強化法
①「グリーン社会」への転換
カーボンニュートラル実現に向けた事業者の計画を主務大臣が認定し、設備投資税制等を措置します。
②「デジタル化」への対応
ビジネスモデルのデジタル化計画を主務大臣が認定し、DX投資促進税制等を措置します。
③「新たな日常」に向けた事業再構築
「新たな日常」に向けた事業再構築の計画を主務大臣が認定し、DX等に取り組む企業に対する繰越欠損金の控除上限の引上げ、財政投融資を原資とした低利融資を措置します。
④バーチャルオンリー株主総会の実現のための特例
上場会社のバーチャルオンリー株主総会の開催を特例的に認めます。
⑤ベンチャー企業の成長支援
大型ベンチャーへの民間融資に対する債務保証制度を措置します。
⑥事業再生の円滑化
事業再生ADR等の私的整理手続きから法的整理手続きへの移行を円滑化します。
⑦規制のサンドボックスの恒久化
規制のサンドボックス制度を、生産性向上特別措置法から移管し、産業競争力強化法にて恒久化します。
●中小企業等経営強化法
中小企業から中堅企業への成長途上にある企業群を支援施策の対象に追加します。
事業承継に先立ち実施するデューデリジェンス等を経営力向上計画の対象とし、中小企業経営資源集約化(M&A)税制を措置します。
中小企業者とともに事業継続力強化に取り組む中堅企業に対し、金融支援を措置します。
先端設備等導入計画を、生産性向上特別措置法から移管し、恒久化します。
●地域未来投資促進法
地域経済牽引事業計画に係る金融支援について、中小企業から中堅企業への成長途上にある企業群を支援施策の対象に追加します。
●中小企業経営承継円滑化法
所在不明株主からの株式買取り等の手続きに必要な期間を、5年から1年に短縮します。
●下請中小企業振興法
これまで、下請振興法の対象としていなかった取引類型を対象に追加します。
国による調査の規定を創設し、発注書面の交付を促進します。
中小企業の強みを活かした取引機会等を創出する事業者の認定制度を創設し、金融支援等を措置します。
●独立行政法人中小企業基盤整備機構法
中小機構の業務に、経営の革新を行なう事業者等に対する助成を追加します。
この法案は、今国会に提出される予定です。
注目したい法改正の動向
児童虐待の口実となっている親の懲戒権の削除、妻が婚姻中に懐胎した子は婚姻前の懐胎であっても夫の子と推定する規定の整備など、民法(親子法制)等の改正に関する中間試案の内容が明らかになりました。
透明かつ公正な、労働紛争解決システムの構築等に向けて設置された「解雇無効時の金銭救済制度に係る法技術的論点に関する検討会」では、労働契約解消金の内容や有期労働契約の期間途中の解雇等についての議論が進んでいます。
民事訴訟法(IT化関係)の改正に関する中間試案がまとめられました。民事裁判の提訴から判決までの一連の手続きをオンラインで完結できるようにすることで、裁判の簡素化・迅速化が期待されます。
クロスボウの所持を許可制とし、空気銃と同様に不法な所持や使用に刑事罰を科す銃刀法改正案が閣議決定されました。
改正法の成立・施行後は、現在流通しているクロスボウのほとんどが規制対象となります。