
近年の様々な技術革新は、デジタルとリアルが融合した新しい領域でのビジネスの創出の可能性を広げています。
しかしその一方で、デジタル化・グローバル化の進展によって、日本企業は厳しい競争環境にさらされています。
そんななか、知的財産活用のさらなる促進が、喫緊の政策課題であるという問題意識のもと、特許庁は有識者による政策推進懇談会を設けました。
同懇談会は知的財産制度の課題について検討を重ね、このたび報告書「知財活用促進に向けた知的財産制度の在り方~とりまとめ~」を公開しました。
●報告書で示された論点 報告書では次のような幅広い論点を提示し、それぞれ今後の検討の方向性を提言しています。
(1)時代に即した知的制度の在り方の検討
①AI、IoT時代に対応した特許の「実施」定義見直し
②意匠の新規性喪失の例外適用手続き
③NFT(偽造不可な鑑定書・所有証明書付きのデジタルデータ)化した画像データの意匠権保護
④コンセント制度の導入
⑤他人の氏名を含む商標の登録要件緩和
⑥商標の品質保証機能
⑦懲罰的損害賠償/利益吐き出し型損害賠償
⑧損害賠償の過失推定規定
(2)中小企業・大学・ベンチャー支援
⑨ライセンス促進策の検討
⑩共有特許の考え方の見直し
⑪知財経営支援機能のINPIT(独立行政法人工業所有権情報・研修館)への集約
⑫一事不再理の考え方の見直し
⑬中小企業の減免措置の見直し/審判・裁定の料金改定
(3)デジタル化への対応
⑭送達制度の見直し
⑮優先権証明書のオンライン化
⑯書面手続きのデジタル化に向けた関係手続整備
●後願商標が認められる? 4番目の論点として挙げられた「コンセント制度」とは、先願商標の権利者の同意(コンセント)があれば、同一または類似する後願商標も併存登録が認められる、というものです。
日本でこの制度が導入されていないことが、グローバルな契約を結ぶ際に障壁となっているとの指摘があり、わが国においてもコンセント制度の導入についてさらなる検討を行なうべき、という方向性が示されています。
その導入については、需要者の保護の観点から、審査において出所混同のおそれを判断する「留保型コンセント」を前提に、事後的に出所混同を生じた場合の手当ても含めて、法改正の具体的内容について検討を進める必要がある、としています。
特許庁はこの報告書を踏まえ、今後、各論について産業構造審議会などで引き続き検討を進めたうえで、商標法等の改正案をまとめることになります。
注目したい法改正の動向
犯罪収益として得た資金を暗号資産に転換した場合、現行の組織犯罪処罰法では没収の対象とならないおそれがあります。
そうした場合でも確実に没収できるよう、組織的犯罪処罰法の改正について古川禎久法務大臣が法制審議会に諮問しました。
新型コロナウイルス感染症対策本部が今後の感染症危機に備えるための対応の方向性をまとめました。
平時に都道府県と医療機関で病床等の提供に関する協定を結ぶ全体像の仕組みを法定化し、病床確保等で国や自治体がより強い権限をもてるようにするなど、感染症法の改正方針を打ち出しています。
次世代医療基盤法検討ワーキンググループが、同法施行5年経過後の見直しの規定に基づく中間とりまとめを公表しました。個人の権利・利益を明確に保護したうえで、より高度な医療を目指すために、個人情報保護法の概念や定義にとらわれない医療情報の匿名化のあり方などの制度的見直しが提言されています。
知床遊覧船事故を受け開催されている対策検討委員会で、国土交通省は安全確保命令に違反した場合に懲役刑の導入を検討するなど、海上運送法による規制を強化する方針を明らかにしています。