
商標法の見直しについての議論が進んでいます。
●守られないブランド名2022年6月に特許庁政策推進懇談会が公表した「知財活用促進に向けた知的財産制度の在り方~とりまとめ~」では、商標法の課題のひとつに、「他人の氏名を含む商標の登録要件緩和」が挙がっていました。
現状では、構成中に他人の氏名等を含む商標は、他人の人格的利益の保護の趣旨から、その承諾を得ているものを除き、商標登録を受けることができないとされています(商標法4条1項8号)。近時の裁判例などでは、この規定が厳格に解釈されるようになっています。
そのため、たとえば『コシノジュンコ』のような、創業者やデザイナーの氏名を冠したファッションブランドは、かつては商標登録できたものの、最近は広く一般に知られているものであっても同名の他人の存在によって登録できず、商標法上の保護が受けられない、という問題が生じています。
前述の「とりまとめ」では、ユーザーニーズ、他人の人格的利益と出願人の商標登録を受ける利益とのバランスや、諸外国との制度調和等の観点から、この規定における他人の「氏名」に一定の知名度の要件を課して、商標として保護できるようにする方針が提言されています。
●知名度+αが登録の要件に この提言を受けて、2022年9月以降に開催されている産業構造審議会知的財産分科会商標制度小委員会では、他人の氏名を含む商標の登録要件緩和について、具体的な改正内容が討議されています。
11月22日に開催された小委員会では、商標法4条1項8号の条文に、他人側の要件として当該「氏名」に「一定の知名度」の要件を課すことに加えて、「他人の氏名」を含む商標出願について「出願人の事情(たとえば、出願することに正当な理由があるか等)」を考慮する要件を課してはどうか、という方向性が示されました。
特許庁は今後も議論を重ね、早ければ2023年の通常国会に商標法の改正案を提出する見込みです。
注目したい法改正の動向
国民生活の安全・安心の確保という観点から「『世界一安全な日本』の創造のための新たな戦略(仮称)」(案)がまとめられました。
このなかでは、刑事手続きのIT化によって、国民負担の軽減と、捜査・公判活動の円滑化・迅速化における刑事司法機能の強化および関係機関の態勢の強化を図るために必要な法整備と、高い情報セキュリティの整備などを、速やかかつ着実に推進することが打ち出されています。
知床遊覧船事故を踏まえ、悲惨な事故が起こることを防ぐべく設けられた事故対策検討委員会により、小型船舶を使用する旅客輸送における安全対策が検討されてきました。
その議論を受け、旅客船の総合的な安全・安心対策の素案では、海上運送法上の事業停止・許可取消処分の事由として、船舶安全法・船舶職員法への違反に加え、船員法への違反を追加することなど、新たな取組みが加えられています。
国民皆保険の維持のために、厚生労働省が医療保険制度改革の議論を進めています。
社会保障審議会医療保険部会では、出産育児一時金、後期高齢者医療制度など、多様な論点について検討されています。
経済産業省が「今後の原子力政策の方向性と実現に向けたアクションプラン(案)」を公表しました。
原子力の開発・利用に当たっての「安全性が最優先」であるとの共通原則の再確認など、「基本原則」に示した考え方を法令等で明確化することが望ましいとしています。
そのなかで既設原発を最大限活用するため、運転期間を40年としたうえで、延長を認める場合は20年を目安に、「東日本大震災発生後の安全規制等の変更による運転停止期間」等はカウントに含めないとし、実質的に60年を超えた運転期間を認める方針を打ち出しています。