会社は、必要に応じて従業員代表(または労働組合)と労使協定を締結する。労使協定が適法なものと認められるためには、従業員代表の選出も適正である必要がある。
会社が労使協定を締結するにあたっては、事業場に労働者の過半数で組織する労働組合がある場合はその労働組合を、そのような労働組合がない場合は労働者の過半数を代表する者(従業員代表)を選出し、その者を労働者側の締結当事者とする必要がある。
労働基準法第41条2号に定められた「管理監督者」は、従業員代表となることはできない。管理監督者は経営者と一体的な立場にあるため、労働者側の代表者となるのはふさわしくないからである。
また、従業員代表は、選出目的を明らかにしたうえで、民主的な手続き(投票、挙手等)により、事業場の労働者の過半数の信任を得て選ばれる必要がある。したがって、次の者は適正な従業員代表とは認められない。
会社側から一方的に指名された者(使用者の意向に基づき選出された者を含む) |
民主的な選出を行なわずに、毎年固定で従業員代表とされている者 |
民主的な選出は行なわれているが、過半数の信任を得ていない者 |
労働者の過半数で組織されていない労働組合(少数労働組合) |
互助会などの代表者 |
注意点!
実務上は、従業員代表として立候補する者がいない、従業員代表になりたがらない、というケースが少なくない。このような場合は、会社側が一方的に指名したくなるところだが、そのようにして選んだ従業員代表と労使協定を締結しても適正な手続きを欠いたものとして無効となる。
したがって、会社としては以下の点を説明して従業員の不安を取り除き、従業員代表をスムーズに選出できるように努めるべきである。
- 従業員が過半数代表者であること、過半数代表者になろうとしたこと、または過半数代表者として正当な行為をしたことを理由として、会社が不利益な取扱いをすることは法律で禁じられていること
- 従業員代表は、労使協定の内容について他の従業員たちの意見を聴取し、集約・調整する義務がないこと
特に、2.については誤解している会社・従業員も多い。従業員代表を選出する際は、「時間外・休日労働に関する労使協定(三六協定)を締結するために従業員代表を選出します」などと選出目的を明らかにして投票等を行なうわけであり、従業員は候補者に信任票を投じることにより、すべてを一任するということを意味している。
労働者数100名の事業場
100名の中には労働基準法第41条2号の管理監督者も含める
信任投票
↓
51名以上からの信任
選出
↓
事業場の労働者の過半数を代表する者
注:労働基準法第41条2号の管理監督者は過半数代表者となることはできない
著者: 佐藤 大輔(社会保険労務士法人坂井事務所、特定社会保険労務士・行政書士)
※記述内容は、2023年10月末現在の関係法令等に基づいています。