試用期間の延長は可能である。ただし、延長するためには、その根拠として、就業規則等に次の事項が定められている必要がある。
・試用期間を延長することがある旨
・試用期間を延長する場合の延長可能期間
・試用期間を延長する理由
一般的に多いのは、職務遂行能力が低い、勤怠状況が悪いという理由での試用期間の延長である。これらは、面接や書類選考では把握しにくく、実際に働いている様子を観察してみないとわからない部分といえる。
ほかには、親族の介護が発生したり、交通事故に遭って入院することになったりして、十分な観察期間が確保できないケースが挙げられる。
試用期間中、従業員は雇用が確実ではない不安定な立場に置かれることから、長すぎる試用期間の設定は民法第90条の公序良俗に抵触する定めとして無効となる。
試用期間の延長についても、会社が無制限に行なえるわけではない。
結論からいうと、延長した場合であっても、試用期間の合計期間は1年以内とすべきであろう。実務上は、「試用期間3か月、延長する場合はさらに3か月」という運用が多い。
試用期間を延長するにあたっては、次の点を従業員に明確に示すべきである。
・試用期間延長に至った具体的な理由(「当社にふさわしくない」といったあいまいな理由では不十分)
・試用期間中の具体的な改善目標
これらの点を示したうえで、定期的に面談を行ない、会社が提示した改善目標の達成度合いを判断し、必要に応じて教育・指導を行なっていく必要がある。適切なフォローをせず、「当人任せ」にするようなことは避けなければならない。
著者: 佐藤 大輔(社会保険労務士法人坂井事務所、特定社会保険労務士・行政書士)
※記述内容は、2023年10月末現在の関係法令等に基づいています。