会社が解雇を行なう場合、解雇制限に該当する者ではないこと、そして解雇予告または解雇予告手当の支払いが必要であることを押さえておけば、労働基準法違反という事態は避けられる。
しかし、労働基準法違反ではないからといって、必ずしも解雇が有効となるわけではない。
労働基準法では、どのような解雇が有効で、どのような解雇が無効かについては定められていない。
したがって、解雇された従業員が「不当な解雇」として労働基準監督署に訴えた場合、労働基準監督署は労働基準法違反の是正はできるが、解雇の有効・無効の判断・決定をすることはできない。
この判断は、最終的には裁判所に委ねられることになる。
最初に押さえておくべきなのは、解雇が正当なものであるためには、就業規則上の解雇事由に基づいている必要がある、ということである。
判例を見ると、就業規則に基づかない解雇が無効とされたケースも多く、解雇が正当なものとみなされるための重要なポイントとなる。
労働局のあっせん申請の場でも、解雇事由が記載された就業規則の提出が求められる。
なお、労働基準法第89条では、就業規則の絶対的必要記載事項として、第3号において「退職に関する事項(解雇の事由を含む)」と規定している。
また、従業員を雇い入れる際の労働条件を通知する段階でも、解雇の事由を書面で明示することが義務づけられている。
以上の取扱いには、従業員がどのような事由に該当した場合に解雇となるのかを明確にする目的がある。
このことを図にすると次のようになる。
対象労働者の解雇を検討
↓
就業規則中のどの解雇事由に該当するかを判断
↓
解雇を通告する際には、就業規則上のどの解雇事由に該当したための解雇かを明示
著者: 佐藤 大輔(社会保険労務士法人坂井事務所、特定社会保険労務士・行政書士)
※記述内容は、2023年10月末現在の関係法令等に基づいています。