
社会の変化、科学技術の進展に伴って、いくつかの法改正の動きがあらわれています。
●侮辱罪の法定刑引上げ
インターネット上の誹謗中傷が問題となるなか、法制審議会-刑事法(侮辱罪の法定刑関係)部会は侮辱罪の厳罰化について議論を重ね、法定刑を「1年以下の懲役もしくは禁錮もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料とする」という要綱案を採択しました。
審議会では刑事法の改正だけでなく、民事の損害賠償額そのものが名誉毀損その他について非常に低額であることが問題とされ、別途検討がなされてしかるべきという意見も委員から出ました。
●被告人の海外逃亡防止
また、法制審議会-刑事法(逃亡防止関係)部会では、保釈中の被告人や刑が確定した者の逃亡を防止し、公判期日への出頭や刑の執行を確保するための刑事法の整備を内容とする要綱案を採択しました。
要綱案は、次の項目で構成されています。
・保釈中または勾留執行停止中の被告人に対する報告命令制度の創設
・保釈中または勾留執行停止中の被告人の監督者制度の創設
・公判期日への出頭等を確保するための罰則の新設
・逃走罪および加重逃走罪の主体の拡張等
・GPS端末により保釈中の被告人の位置情報を取得・把握する制度の創設
・禁錮以上の実刑判決宣告後における裁量保釈の要件の明確化
・控訴審における判決宣告期日への被告人の出頭の義務付け等
・保釈等の取消しおよび保釈保証金の没取に関する規定の整備
・禁錮以上の実刑判決の宣告を受けた者に係る出国制限制度等の新設
・裁判の執行に関する調査手法の充実化等
・刑の時効の停止に関する規定の整備
法務省はこれらの要綱案を受け法整備を進めていく予定です。
ただし、侮辱罪の厳罰化は正当な表現行為に対する委縮効果があるのではないか、保釈中の被告人にGPSを装着させて海外への逃亡を防ぐといってもGPS装着の線引きをどうするかなど、こうした動きには運用面での様々な懸念も指摘されています。
注目したい法改正の動向
第6次エネルギー基本計画が閣議決定されました。
2030年に向けた政策改正のポイントとして、非化石エネルギーも含むエネルギー全体の使用の合理化や、非化石エネルギーの導入拡大等を促す規制体系への見直し、省エネ法改正を視野に入れた制度的対応の検討などが挙げられています。
事務所衛生基準の制定から50年近く経過していることから、基準の見直しが進められています。事務室の作業面の照度基準の引上げ、男女別のトイレの設置基準緩和などが検討されています。
岸田文雄首相は所信表明演説で、新型コロナ対応について、司令塔機能の強化や人流抑制、医療資源確保のための法改正について強調し、体制整備についての強い意思を示しました。
燃料電池自動車等の規制のあり方について、経済産業省が設置した検討会が、関係する規制を道路運送車両法に一元化する方向で制度整備を進める最終報告書をまとめました。
厚生労働省の再生医療等安全性確保法の見直しに係るワーキンググループは、体内に遺伝子を直接導入する遺伝子治療等技術を再生医療等安全性確保法の対象に含めるという方針を示しています。
太陽光や風力などによる小規模発電施設の事故が増加しています。産業構造審議会の電気保安制度ワーキンググループは、発電設備の所有者・占有者に安全確認についての届出を義務付けるなど、規制強化の方向性を示しています。