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解雇無効時の金銭救済制度に関する法技術的論点の整理

解雇の有効性が争われ、不当な解雇が裁判で無効と認められても実際には職場復帰がむずかしいことが多い現状から、検討されているのが金銭を支払って雇用契約を解消する「解雇の金銭解決制度」です。
その検討の一環として、厚生労働省の「解雇無効時の金銭救済制度に係る法技術的論点に関する検討会」が、報告書をまとめました。
この報告書では、無効な解雇がなされた場合に、労働者の請求によって使用者が一定の金銭(労働契約解消金)を支払い、その支払いによって労働契約が終了する仕組みを念頭において、取り得る仕組みや検討の方向性等に係る選択肢等が示されています。

●制度の対象等
権利の法的性質等として、①対象となる解雇・雇止め、②権利の発生要件等、③権利行使の方法、④債権発生の時点、⑤権利行使の意思表示の撤回等、⑥権利放棄、⑦相殺・差押えの禁止、⑧権利行使期間、⑨権利の消滅等、⑩解雇の意思表示の撤回、について検討されています。
この制度の対象となるのは、無期労働契約における無効な解雇と、有期労働契約における無効な契約期間中の解雇および労働契約法19条に該当する雇止めとすることが考えられるとされています。
権利行使の方法は、訴えの提起および労働審判の申立てに限ることが考えられるとされています。

●労働契約解消金の性質
労働契約解消金の定義をどのように定めるかは、その性質や考慮要素等の検討とも関連しており、政策的に判断すべきとしています。
労働契約解消金債権は、バックペイ、不法行為による損害賠償、退職手当の各債権とは別個のものと整理し得るとされています。
労働契約解消金の考慮要素については、定型的なものである給与額、勤続年数、年齢、合理的な再就職期間などと、評価的なものである解雇に係る労働者の事情、解雇の不当性といったものが考えられるとしています。
また、労働契約解消金の上下限の設定や、労使合意による別段の定めを認めるかについては、政策的に判断すべきとしています。
この制度導入の是非について、今後、労使関係者も含めた労働政策審議会において議論が進められる予定です。

注目したい法改正の動向

多様な働き方のルール整備

多様な働き方の普及が期待されるなか、「多様化する労働契約のルールに関する検討会」の報告書が公開されました。有期労働契約の労働者が無期転換ルールを理解したうえで転換申込みを判断できるよう、労働基準法の労働条件明示事項に、転換申込機会と無期転換後の労働条件について使用者から個々の労働者に通知することを追加することなどが提言されています。

共生社会の環境づくり

コロナ禍でも外国人労働者数が令和3年10月に過去最高になるなど在留外国人が増加傾向にあるなか、出入国在留管理庁が「外国人との共生社会の実現に向けたロードマップ(案)」をまとめました。
日本に居住する外国人が生活を円滑に営むことができる環境整備に寄与するしくみとして、日本語教育機関の認定制度および日本語教師の資格制度を整備する法案提出の検討を進めるとしています。

脱炭素社会の実現を目指す

脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律(建築物省エネ法)等の一部を改正する法律案が閣議決定されました。
この改正によって、省エネ基準への適合がすべての新築住宅・非住宅建築物にも義務付けられることになり、建築関連業界への大きな影響が予想されます。

医療保護入院制度の見直し

「地域で安心して暮らせる精神保健医療福祉体制の実現に向けた検討会」の議論が進んでいます。
本人同意がない場合でも、入院を必要とする精神障害者を強制入院させる医療保護入院制度について、制度の継続を前提としない見直しの方向性が示されています。
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