
ことしの1月、厚生労働省の労働基準関係法制研究会が、労働基準法制の在り方について報告書をとりまとめました。
同報告書において、1985年にとりまとめられた労働基準法研究会報告「労働基準法の『労働者』の判断基準について」について、その作成から約40年が経過し、働き方の変化・多様化に必ずしも対応できない部分が生じていること、この間に積み重ねられた事例・裁判例等を分析・研究し、学説も踏まえながら見直しの検討をすることや、国際的な動向も視野に入れながら総合的な研究を行なうことの必要性について指摘がなされ、厚生労働省において専門的な研究の場を設けて総合的な検討を行なうべきこととされました。
この報告書を受け、労働基準法上の「労働者性」に関する幅広い知見を有する専門家を参集し、労働者性の判断基準に関する分析・研究を深めることを目的として、「労働基準法における『労働者』に関する研究会」が設置されました。
研究会の検討事項
本研究会においては、次に掲げる事項について調査・検討を行なうことになります。
①労働基準法上の労働者性に関する事例、裁判例等や学説の分析・研究や、プラットフォームワーカーを含む新たな働き方に関する課題や国際的な動向の把握・分析
②労働基準法上の労働者性の判断基準の在り方
③新たな働き方への対応も含めた労働者性判断の予見可能性を高めるための方策
働き方の変化・多様化の1つとして、デジタルプラットフォームを介して、発注者に対して労務の提供や労働の成果物の提供を行なうという働き方(プラットフォームワーク)が、急速に拡大していることが挙げられます。そこで新たな問題になっているのがプラットフォームワーカーの「労働者性」です。昨今、UberEatsやAmazonの配達員などのワーカーが、労働者としての保護対象に該当するかが問われる事案が散見されます。
交渉力の格差や判断の立証責任を労使どちらにおくかなど、時代に即した判断基準についての見直し作業が進められる予定です。
注目したい法改正の動向
世界情勢が不安定ななか、経済安全保障の在り方が課題になっています。
自民党の経済安全保障推進本部の小林鷹之本部長は、来年の通常国会で、重要な個人データを保護するための規制など、経済安全保障推進法の改正をめざす意向を表明しました。
厚生労働省の「妊娠・出産・産後における妊産婦等の支援策等に関する検討会」が議論の整理を取りまとめました。来年度を目途に現在全国平均で約50万円かかっているとされている標準的な出産費用の自己負担を無償化する方針が示され、国民健康保険法等の改正が検討されます。
高齢化等で医療費のさらなる増加が見込まれる状況下、現役世代の保険料負担とセーフティネット確保のバランスが問われています。
厚生労働省は「高額療養費制度の在り方に関する専門委員会」を設置しました。自己負担限度額や多数回該当の見直しなど、高額療養費制度の見直しについての検討を進め、今秋までに方向性を示す予定です。
総務省の情報通信審議会郵便料金政策委員会は、郵便事業の採算性の改善のため、日本郵便が郵便料金の上限を設定し、国が認可する制度に改定し、料金を柔軟に変更しやすくする郵便法の見直し方針を示しています。
政府は、医療や金融、教育、交通といった分野のデータを円滑に連携できる基盤を整備し有効活用するための「官民データ活用推進基本法」の改正または新法の制定を、来年の通常国会で進める方針を明らかにしています。
6月中にまとめる「データ利活用制度の在り方に関する基本方針」に、その内容を盛り込む予定です。