
政府は「経済財政運営と改革の基本方針2025」(骨太の方針)を閣議決定しました。
今年度の骨太の方針は、
1 マクロ経済運営の基本的考え方
2 賃上げを起点とした成長型経済の実現
3 中長期的に持続可能な経済社会の実現
4 当面の経済財政運営と令和8年度予算編成に向けた考え方
の4章で構成され、法整備を含めた今後の方向が示されています。
多様で柔軟な働き方の推進
第2章で打ち出されている内容の1つが、短時間正社員をはじめとする多様な正社員制度、勤務間インターバル制度の導入促進、選択的週休3日制の普及、仕事と育児・介護の両立支援、すべての就労困難者に届く就労支援に取り組むことなど、多様で柔軟な働き方の推進です。
また、いわゆる「年収130万円の壁」を意識せず働くことができるよう、2025年度中に、労働時間の延長や賃上げを通じて労働者の収入を増加させる事業主を支援する措置を実施するとしています。
働き方改革関連法施行後5年の総点検を行ない、働き方の実態およびニーズを踏まえた労働基準法制の見直しについて、検討を行なうともしています。
「投資立国」や「資産運用立国」による将来の賃金・所得の増加の方策として打ち出されているのが、DXの推進です。「デジタル行財政改革」では、国民生活に密着し社会・経済的な重要性が高い分野について、利用者起点で規制・制度の見直しやデジタル活用を進めるとともに、国・地方の共通基盤の整備を推進するとしています。
データ利活用制度の在り方についても、官民データ活用推進基本法の抜本的改正、新法など必要な検討を行ない、次期通常国会への法案提出、およびこれを下支えする個人情報保護法の改正案についても提出を目指すとしています。
税制面については、第3章において、各種所得の課税の在り方および人的控除をはじめとする各種控除の見直しを含む所得税の抜本的な改革の検討を進めるとしており、こちらの改正の動きも働き方に影響すると思われます。
注目したい法改正の動向
労災保険制度の現代的課題を包括的に検討すべく設置された、厚生労働省の「労災保険制度の在り方に関する研究会」により行なわれた論点整理の内容が明らかになりました。
労災保険の加入が任意とされている農林水産業の労働者にも、加入を強制すべきなどの意見が出されています。
インサイダー取引などの不公正取引等について、既存の法令では違反行為として捕捉できない事例や、課徴金の額が低いため抑止効果として不十分な事例がみられます。
そのため、証券取引等監視委員会から内閣総理大臣および金融庁長官に対して、不公正取引の規制強化についての建議が行なわれました。これを受けて金融庁では、来年の通常国会に金融商品取引法の改正案を提出すべく、検討が進められる予定です。
これからの知財を考えるうえでの大きなテーマが、生成AIの利活用推進と、それに伴うリスクです。政府の知的財産戦略本部は知的財産に関するこれからの戦略についてまとめた「知的財産推進計画2025」を決定しました。計画では、AI利用発明の発明者の定義等、AI技術の進展をふまえた発明の保護に関する法改正等について検討する方針が示されています。
ことし4月に閣議決定された「食料・農業・農村基本計画」で示された、農林水産業・食品産業の「海外から稼ぐ力」の強化という方針を受け、農林水産物等の輸出額を5兆円とする等の2030年目標が設定されました。
それに伴い、「農林水産物・食品の輸出拡大実行戦略」が改訂され、日本産のブランド品種保護のため、種苗開発者が得られる育成者権を50年に延長する等の種苗法の改正が検討される予定です。