
内閣府の規制改革推進会議がことし5月に取りまとめた「規制改革推進に関する答申」には、「地方創生」「賃金向上、人手不足対応」「投資大国」「防災・減災」という4つの政策的な柱の下、87に上る改革事項が盛り込まれています。
このなかで、「賃金向上、人手不足対応」に関して示された労働法関連の規制改革の方針について、いくつかみていきましょう。
多様な働き方の推進として、次のような規制改革を進めることが挙げられています。
労働時間のカウント方法に焦点
・スタートアップの柔軟な働き方の推進(裁量労働制の対象業務の検討等)
スタートアップで働く労働者の就労実態等を把握する調査を行なったうえで、スタートアップにおける柔軟な働き方に資する検討に着手するとしています。
また、スタートアップで働く役職者等の管理監督者への該当性の判断の考え方のさらなる明確化の検討を開始するとしています。
・副業・兼業のさらなる円滑化に向けた環境整備
副業・兼業を行なう労働者の、割増賃金の支払いに係る労働時間の通算管理や健康確保の在り方について検討を開始するとしています。
労働者の健康確保のための労働時間の通算は維持しつつ、割増賃金の支払いについては通算を要しないよう制度改正に取り組むことが考えられる、とした労働基準関係法制研究会の報告書も踏まえて検討するとしています。
・時間単位の年次有給休暇制度の見直し
年次有給休暇は「日」単位の取得が原則ですが、労使協定の締結により、年に5日を上限として時間単位の取得が可能とされています。
労働者の選択肢を拡大し、通院、自己啓発、育児・介護等の多様なニーズに一層対応した働き方を実現するため、時間単位の年次有給休暇日数の拡大(たとえば年休付与日数の50%程度まで拡大すること)を検討し、今年度中に結論を得るとしています。
結論を得た検討については速やかに措置を行なう方針も示されており、今後の議論が注目されます。
注目したい法改正の動向
法制審議会ー民法(遺言関係)部会が、遺言制度の見直しに関する中間試案を示しました。証人の立会いと録画を要件に、自筆での記述や押印を不要とするデジタル技術を活用した遺言方式の創設等が進められる見込みです。
仮想空間の利活用を前提としたさまざまなビジネスが展開されるなか、仮想空間におけるデザインの権利保護が新たな課題となっています。
特許庁の産業構造審議会知的財産分科会意匠制度小委員会は、意匠制度を見直し、仮想物品等の形状等を表わした画像を保護対象とする制度的措置を講じる方向で検討を進めるという方向性を打ち出しました。
外国人の懸念すべき活動に対する実態把握や、関係機関のより緊密な連携を可能とするための情報基盤の整備、各種制度・運用の点検・見直しなどに取り組むための司令塔となる事務局組織として「外国人との秩序ある共生社会推進室」が発足しました。
「秩序ある共生社会の実現」に向けて、実態調査を受けての入管法等の見直しが予想されます。
「日本企業の海外展開動向を踏まえた国際課税制度のあり方に関する研究会」が最終報告書をまとめました。ビジネスの実態を踏まえて外国子会社合算税制(CFC税制)の見直しを行ない、日本企業に生じている過剰課税や過度なコンプライアンスコストの軽減が必要との見解を示しています。
国土交通省は、社会資本整備審議会計画部会で「交通空白」の解消を目指し、交通事業者と自治体の連携強化を促す新たな制度について、関連法改正を視野に入れた検討を始めることを明らかにしています。