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“自己評価が高い人”ほど陥りがちな「心の罠」

2021年11月4日更新

“自己評価が高い人”ほど陥りがちな「心の罠」

“我流”で動くな!——ビジネスで遠回り・空回りしないための原理原則

PICK UP書籍:30歳からのリーダーの教科書

物事を成り立たせる根本的な決まりである「原理原則」。時代が変わっても変わらないもの。流行に振り回されずに光り続けるもの。解釈はいろいろあるが、この漢字4文字の意味するものは、実は広くて深い。名だたる企業を率いて国内外のビジネスの第一線で活躍してきた新 将命(あたらし まさみ)氏は「ビジネスで成功するのにも『原理原則』がある。にもかかわらず、多くの人がそれを知らず、我流で動いて遠回り・空回りしている」と言う。ここでは、そんな“自己評価が高い人”ほど陥りがちな「心の罠」から免れるための原理原則を紹介しよう。

※本稿は『伝説のプロ経営者が教える 30歳からのリーダーの教科書』(新将命 著)を一部抜粋・再編集しています。

能力は他人が決めるもの

人が犯しがちな勘違いの中で、おそらく最も多いのは自己評価だろう。

人の評価の基軸とは、その人の実体(Substance)と実績(Performance)の二本立てである。しかし、人は自分で自分を評価するときには2割以上のインフレで、他人を評価するときには2割以上のデフレで評価するといわれる。

2割足す2割で4割、この差は大きい。人は、自分は実際の自分より優れていると思い込み、他人は実際よりもダメなやつと思い込んでしまうということだ。2割増しの自己評価は、思い上がりという勘違いを生み、自分が思うほどには評価されていない現実とのギャップに悩むことになる。

自己評価と他人から受ける評価のギャップに悩む人は、「他人の評価のほうが間違っている」と、さらに勘違いを増幅させ、より深刻な精神状態に陥ることもある。

自分を実際より高く評価しているのは、ある意味で幸福な勘違いだが、人から受ける評価とのギャップに苦しむようになると不幸な勘違いとなってしまう。

自己評価と他者評価のギャップに悩んでいる人は、まず自身の自己評価を2割ほど差し引いて見るのが適切な対応なのだが、なかなかそうはいかないようだ。

反面、2割引の他人評価は、人を根拠なく見くびったり、バカにしたりという質の悪い勘違いにもつながる。

どちらも人生を空回りさせかねない悪しき勘違いである。そもそも人の能力のあるなし、高い低いは自分が決めることではない。他人が決めることだ。

昭和の疑獄事件の1つ、「ロッキード事件」で、田中角栄元首相を相手に捜査の指揮を執った、元東京地検特捜部の検事・堀田力氏のいうとおり、「能力は他人が決めるもの」なのである。「春風をもって人に接し、秋霜をもって己を律す」(佐藤一斎)という。多くの人は〈春風をもって己を遇し、秋霜をもって人を律する〉という誤りを犯している。

思い込みによる自信の功罪

自分で自分をエライという人間に偉い人はいない。自分で自分をエライと自画自賛する人は、他人は誰も自分を認めてくれないと告白しているお粗末人間に過ぎない。

しかし、自分で自分をエライと思っているうちに、本当に自分はエライと思い込んでしまうのが人間の悲しい性(さが)である。

この思い込みによる自信という効果は、正しい使い方をすれば、本人にも周囲にもよい結果をもたらすが、自信が過信や慢心、さらには傲慢へと増幅すれば、最後には破綻という悪しき結果を招くことになりかねない。

人の評価ばかりではない。株式市場や為替相場でも、それぞれの銘柄や通貨の値段が正しく評価されていることは少ないという。常に高すぎるか、安すぎるのである。腕利きの相場師は、このギャップから利益を抜くのだ。

人の批評はありがたく受けること

では、人生を誤りかねない「過信・慢心・傲慢」という心の罠からは、どうすれば免れることができるのか。

先述したように、自己評価するときは2割引で、他人を評価するときは2割増しでやればよいのだが、それがなかなかできないのも残念な現実である。

だが、できることもある。最も手軽で効果的な方法は、第三者の批評に、謙虚に積極的に耳を傾ける(Active Listening)ことに尽きる。

多くの人は、他人の評価は頼まれなくても積極的にやる。こうした機会を有効に活用すればよいのである。

他人の評価というのは、それがどんなに耳の痛い話であっても、利害関係のない人からの評価であれば現実に近いと考えてよい。

そして、評価には、何をどう改善すればよいのかについての暗示(ときには明示)が含まれていることも多い。

だから、他人からの評価、特に耳の痛いことを言ってくれる人の言葉には、精一杯真摯(しんし)な態度で、丁寧に聴くこと、聴いた後には一言お礼を欠かさないことも大事である。

真摯で丁寧な態度で話を聴く相手に対しては、批評する側も、はじめは自分の優越感を満足させたいだけだったとしても、次はこちらのために何か役立つことを言おうと考えるものである。

「巨耳細口(きょじさいこう=耳は大きく開いて人の言葉を聴き、口は言葉少なく控えめに)」を心がけたい。
著者プロフィール:新将命
1936年東京生まれ。早稲田大学卒業。株式会社国際ビジネスブレイン代表取締役社長。シェル石油、日本コカ・コーラ、ジョンソン・エンド・ジョンソン、フィリップスなど、グローバル・エクセレント・カンパニーの社長職等を経て、2003年から2011年3月まで住友商事株式会社のアドバイザリー・ボード・メンバーを務める。「経営のプロフェッショナル」として50年以上にわたり、日本、ヨーロッパ、アメリカの企業の第一線に携わり、いまも様々な会社のアドバイザーや経営者のメンターを務めながら長年の経験と実績をベースに、講演や企業研修、執筆活動を通じて国内外で「リーダー人財育成」の使命に取り組む。おもな著書に『経営の教科書』『リーダーの教科書』(以上、ダイヤモンド社)、『上司と部下の教科書』(致知出版社)、『経営理念の教科書』(日本実業出版社)がある。

2021/9/17発行
四六判/並製
260頁

30歳からのリーダーの教科書

ジョンソン・エンド・ジョンソンなど外資系企業6社で活躍、3社で社長を務めた「伝説のプロ経営者」がこれからのビジネスリーダーに贈る「学びと行動」の実践的指南書。50年のプロ経営者生活で著者自身を助けた、成功のための黄金の「原理原則」を教えます。
著者:新将命
価格:1,760円(税込)
ISBN:4-534-05876-8
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