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採用内定取消しにまつわる法律問題と留意点

10月の総務豆知識

採用内定取消しにまつわる法律問題と留意点
最終更新日:2023年9月27日
採用内定取消しや入社時期の繰下げは、学生本人はもとより、その家族等にも大きな失望を与えますから、できる限り避けたいところです。
厚生労働省では、採用内定の取消しを行なう前に、まずは管轄の労働局・ハローワークへ相談するよう呼びかけています。
そして、やむを得ず採用内定取消しや入社時期の繰下げを行なう場合には、ハローワークと施設の長(学校長)に通知する必要があります。
以下、採用内定取消しにまつわる法律問題と留意点について解説します。

(1)採用内定の法的効果

採用内定通知がなされた場合、一般に、企業と内定者の間では「解約権留保付き労働契約」が成立するとされています。
「解約権留保付き」とは、入社までにやむを得ない事由が発生した場合には、採用内定を取り消すことがあるという条件付きの労働契約です。
条件付きとはいえ、労働契約自体は成立していますから、合理的な理由もなく、企業側が一方的に採用内定を取り消すことは許されません。

(2)採用内定取消しが認められる場合とは

採用内定取消しについて、「採用内定の取消し事由は、採用内定当時知ることができず、また知ることが期待できないような事実で、これを理由として取り消すことが解約権留保の趣旨、目的に照らして、客観的に合理的で社会通念上相当として是認できるものに限られる」とした判例があります。
もちろん、相当の事情さえあれば採用内定取消しが認められるとは限りません。あくまで個別の具体的な事実に即して、解約権濫用の程度・有無が判断されます。

「新規学校卒業者の採用に関する指針」 (厚生労働省)の「4 採用内定取消し等の防止」では、次のように注意を促しています。

(1) 事業主は、採用内定を取り消さないこと。

(2) 事業主は、採用内定取消しを防止するため、最大限の経営努力を行なう等、あらゆる手段を講ずること。
なお、採用内定者との労働契約が成立したと認められる場合には、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない採用内定取消しは、無効とされることについて、事業主は十分に留意すること。

(3) やむを得ない事情により、どうしても採用内定取消しまたは入社時期の繰下げを検討しなければならない場合には、あらかじめハローワークに通知するとともに、ハローワークの指導を尊重すること。
この場合、解雇予告や休業手当について定めた労働基準法その他の法令に抵触しないように十分に留意すること。
また、採用内定取消しの対象となった学生・生徒の就職先の確保に最大限の努力を行なうとともに、採用内定取消しまたは入社時期の繰下げを受けた学生・生徒からの補償等の要求には誠意をもって対応すること。

企業としては、安易な採用内定取消しは許されないこと、そしてやむを得ず取り消さざるを得ない場合の義務(配慮)について、十分に留意する必要があります。

なお、「青少年の雇用の促進等に関する法律」(若者雇用促進法)に基づく「青少年の雇用機会の確保及び職場への定着に関して事業主、特定地方公共団体、職業紹介事業者等その他の関係者が適切に対処するための指針」(事業主等指針)には、次の規定が設けられています。
採用内定者について、労働契約が成立したと認められる場合には、当該採用内定者に対して、自由な意思決定を妨げるような内定辞退の勧奨は、違法な権利侵害に当たるおそれがあることから行なわないこと。
本人の意思に反する内定辞退の強要は、本来は採用内定取消しとして取り扱うべきですから、こうした行為は行なわないよう注意してください。

2023年10月の「総務豆知識」トピックス