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決算賞与の支給と税務上の留意点

3月の経理豆知識

決算賞与の支給と税務上の留意点
最終更新日:2024年3月1日
バブル経済崩壊後のいわゆる「失われた30年」を経て、日経平均株価が約34年ぶりに最高値を更新するなか、増収・増益を確保し、年度末を控えて決算賞与の支給を検討中の企業もあるかもしれません。
以下では、決算賞与の税務上の取扱いと留意点を確認します。

(1)賞与の区分と損金算入時期

法人税法上、従業員に対して支給する賞与の損金算入時期は、賞与の区分に応じて次のようになっています。
賞与の区分 損金算入時期
1.就業規則等により定められる支給予定日が到来している賞与(その支給額が従業員に通知され、かつ、その支給予定日または通知日の属する事業年度において、その支給額を損金経理したものに限る)
その支給予定日または通知日のいずれか遅い日の属する事業年度
2.次の3つの要件をすべて満たす賞与
イ その支給額を、各人別に、同時期に支給を受けるすべての従業員に対して通知していること
ロ イの通知した金額を、通知したすべての従業員に対し、その通知日の属する事業年度終了の日の翌日から1か月以内に支払っていること
ハ その支給額につき、イの通知日の属する事業年度において損金経理していること
その支給額の通知日の属する事業年度
3.上記「1」「2」以外の賞与
その支払いをした日の属する事業年度
従業員に支給する賞与は、原則として、実際にその支払いが行なわれた日の属する事業年度に損金算入を認めることとされています。
そのため、決算期において従業員賞与を未払計上する場合には、注意が必要です。

決算賞与とは、定例の賞与とは別に、好業績を上げた事業年度において、その利益を従業員に還元するために臨時的に支給される賞与をいいます。定例の賞与とは異なり、毎年決まって支給されるというわけではありません。
決算賞与が問題となるのは、会社の利益調整を目的として、恣意的に支給されることがあるからです。そのため、損金算入の要件が厳格に定められています。

未払計上した決算賞与を当期の損金として処理するためには、上表「2」のイ、ロ、ハの3要件を満たしていなければなりません。
その内容から、実際に支払いが行なわれたものと同視し得るような状態にあるものに限って、例外的に損金算入が認められます。

(2)支給通知は書面で行なう

決算賞与の未払計上が認められるためには上記の3要件を満たさなければなりませんが、なかでも税務調査等で問題になりがちなのが、従業員に対する通知についてです。
税務調査等の際には、実際に通知されているかどうかが確認されるので、口頭による通知では不十分です。各人への通知は日付を付した書面で行ない、対象従業員からは通知を受けた旨のサインをもらっておくことが望ましいでしょう。

(3)決算賞与の未払計上が認められない場合

賞与の支給につき、就業規則等において「支給日在籍要件」(支給日に退職していた場合には支払わないという条件)が定められている場合には注意が必要です。
法人税基本通達9-2-43では、「支給日に在職する使用人のみに賞与を支給することとしている場合のその支給額の通知は、要件を満たす支給額の通知には該当しない」旨が定められています。
したがって、支給日までに退職した従業員がいる場合はもちろん、結果的に退職者がなく全員に支給した場合であっても、そもそも「支給日在籍要件」があるだけで決算賞与の未払計上は認められないことになります。

また、あらかじめ通知した額と実際の支給額とが異なる従業員が1人でもいる場合、通知額と支給額が異なる従業員に支給した分だけでなく、他の従業員の分も含めたすべての賞与が否認されてしまうことにも注意しましょう。