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出向者の社会保険・労働保険の取扱い

3月の総務豆知識

出向者の社会保険・労働保険の取扱い
最終更新日:2024年2月28日
出向とは、一般に、出向元企業の従業員としての身分を維持したまま、他の企業の指揮命令の下で就労(労務を提供)することをいいます。したがって、出向者は、出向元と出向先の双方との雇用関係が生じます。
出向者の給与に関しては、出向契約の内容は企業間で自由に取り決めることができるため、実際にはさまざまな契約(支給)形態があります。
出向先が直接、本人に支給する形もありますが、出向元が出向先から「給与負担金」「経営指導料」等の名目で給与相当額を受け取り、出向元から出向者に支給するケースが多くなっています。
このように、給与の支給が特殊な形態であることから、出向者の社会保険・労働保険についても、通常とは異なる例外的な取扱いが発生します。
出向者の社会保険・労働保険の取扱いを確認してみましょう。

(1)社会保険の取扱い

給与の支給方法(出向元と出向先のいずれが支払うか)によって、出向者の社会保険の取扱いが異なります。具体的には以下のとおりです。

1.出向先が全額を支払う場合
出向先が給与の全額を支払う場合には、出向先で社会保険が適用されます。
社会保険の被保険者資格は、出向元では喪失し、出向先において新たに取得します。

2.出向元が全額を支払う場合
出向元が給与の全額を支払う場合には、出向元で社会保険が適用されます。
社会保険の被保険者資格は、出向元で継続します。

3.分担して支払う場合
出向元と出向先が分担して給与を支払う場合(出向者が双方と常用的使用関係にある場合)には、出向元での被保険者資格が継続するとともに、出向先でも被保険者資格を取得します。
同時に複数(2以上)の適用事業所に使用されることにより、管轄する年金事務所または保険者が複数となる場合は、被保険者(出向者)が主たる事業所を選択します。
この選択にあたっては、出向者が「健康保険・厚生年金保険 被保険者所属選択・二以上事業所勤務届」を年金事務所に提出します。
この届出以後は、出向者が選択した事業所を管轄する年金事務所(または健康保険組合)が、出向者に関する事務を行ないます。
なお、標準報酬月額の算定にあたっては、出向先と出向元の給与を合算します。

(2)雇用保険の取扱い

雇用保険は、「生計の維持に必要な主たる賃金を受ける雇用関係」でのみ適用されることになるため、給与の支給額が多いほうの被保険者となるのが原則です。
保険関係が成立するのは出向先もしくは出向元のいずれかですから、雇用保険料の申告・納付において給与は合算しません。

(3)労災保険の取扱い

労災保険は、出向元と出向先のいずれが給与を支払うかにかかわらず、実際に労務を提供している先、つまり出向先での適用となります。
労災保険料は、出向元から支払われる給与も出向先から支払われている給与とみなして(合算して)、出向先において申告・納付します。


■出向者の社会保険・労働保険の適用一覧
種別 適用・給与の扱い
社会保険
・出向先または出向元で適用(給与の全額を支給している先、分担して双方と常用的使用関係にある場合は出向者が選択)
・給与は合算する
雇用保険
・出向先または出向元で適用(給与の支給額が多い先)
・給与は合算しない
労災保険
・出向先で適用(実際に労務を提供している先)
・給与は合算する