公開日:2025年6月26日
「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律等の一部を改正する法律案」が先の通常国会で可決・成立し、6月11日に公布されました。
これにより、カスタマーハラスメントから従業員を守る対策(以下、「カスハラ対策」)が企業に義務づけられます。
あわせて、求職者等に対するセクシャルハラスメントを防ぐ対策(以下、「就活セクハラ対策」)も義務化されます。
以下、改正のポイントと企業の対応を確認してみましょう。
(1)カスハラ対策の義務化
企業にカスハラ対策を義務づける改正労働施策総合推進法33条は、次のように規定されています(一部略)。
事業主は、職場において行われる顧客、取引の相手方、施設の利用者その他の当該事業主の行う事業に関係を有する者の言動であって、その雇用する労働者が従事する業務の性質その他の事情に照らして社会通念上許容される範囲を超えたもの(以下、「顧客等言動」)により当該労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備、労働者の就業環境を害する当該顧客等言動への対応の実効性を確保するために必要なその抑止のための措置その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。
このことから、カスタマーハラスメントとは、以下の3つの要素をすべて満たすものをいいます。
1.顧客、取引先、施設利用者その他の利害関係者が行なうもので、
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2.社会通念上許容される範囲を超えた顧客等言動により、
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3.労働者の就業環境を害すること
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相談体制の整備や対応マニュアルの策定など、企業が講じるべき具体的な措置の内容等は、今後、指針において示される予定です。
(2)就活セクハラ対策の義務化
カスタマーハラスメントによる被害と同様に、近年、求職者等(就職活動中の学生やインターンシップ生等)に対するセクシャルハラスメントによる被害が深刻化しています。
そのため、求職者等に対するセクシャルハラスメントを防止するための措置を講じることが、男女雇用機会均等法上の企業の義務となります。
相談体制の整備や面談ルールの策定など、企業が講じるべき具体的な措置の内容等は、今後、指針において示される予定です。
(3)施行スケジュールと企業の対応
カスハラ対策、就活セクハラ対策の義務化に関する改正規定は、公布日(6月11日)から起算して1年6か月以内の政令で定める日に施行されます。
したがって、早ければ2026年の秋ごろ、遅くとも2026年12月までには施行されることになります。
カスタマーハラスメントや求職者等に対するセクシャルハラスメントはあってはならないものですから、企業としては、今後示される指針等も踏まえて、従業員や求職者等を守るために必要な対策を講じていく必要があります。