公開日:2025年7月31日
下請法(下請代金支払遅延等防止法)は、親事業者による下請事業者に対する優越的地位の濫用行為を取り締まる法律です。
親事業者が下請法に違反した場合には、公正取引委員会から違反行為を取り止めるよう勧告されます。
また、勧告された場合は、企業名や違反事実の概要などが公表されます。
先の通常国会において「下請代金支払遅延等防止法及び下請中小企業振興法の一部を改正する法律」が可決、成立しました(5月23日公布)。
近年の急激な労務費や原材料費、エネルギーコストの上昇を受け、サプライチェーン全体で適切な価格転嫁を定着させる「構造的な価格転嫁」の実現を図っていくことが重要な課題となっています。
今回の改正は、発注者・受注者の対等な関係に基づき、事業者間における価格転嫁と取引の適正化を図ることを目的としています。
以下、主な改正ポイントを確認してみましょう。
(1)協議を適切に行なわない代金額の決定の禁止
代金に関する協議に応じないことや、協議において必要な説明または情報の提供をしないことによる、一方的な代金の額の決定を禁止します。
(2)手形払い等の禁止
下請法の対象取引において、手形払いを禁止します。
また、その他の支払手段(電子記録債権やファクタリング等)についても、支払期日までに代金相当額を得ることが困難なものを禁止します。
(3)運送委託の対象取引への追加
物流問題への対応として、下請法の対象取引に、製造、販売等の目的物の引渡しに必要な運送の委託を追加します。
(4)適用基準(従業員基準)の追加
下請法の適用基準に、従業員数300人(役務提供委託等は100人)の区分を新設し、規制と保護の対象を拡充します。
(5)面的執行の強化
関係行政機関による指導・助言に係る規定、相互情報提供に係る規定等を新設します。
(6)法律名・用語の変更
法律名について、「下請代金支払遅延等防止法」が「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」に、「下請中小企業振興法」が「受託中小企業振興法」に改められます。
また、用語について、「下請事業者」が「中小受託事業者」に、 「親事業者」が「委託事業者」等に改められます。
今回の改正法は、2026年1月1日から施行されます。親事業者となる企業には大きな影響を及ぼす改正となりますので、改正内容を踏まえて適切に対応する必要があります。