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専門家コラム Professional Eye

2018年8月28日更新

働き方改革・法改正でやるべき有給休暇管理はこう進める

[第3回] このさき、有給休暇の管理はどう進めるべきか

[大東恵子氏(特定社会保険労務士)]

年次有給休暇は労働者の権利として認められているものではありますが、会社としては今後、その取得・消化について、よりいっそう適切に管理していかなければならない問題です。働き方改革や法改正などの影響で、計画的付与、半日有休の実施など、有給休暇の管理は、ますます煩雑になりそうです。 有給休暇の取得義務化など、これから起こりうる課題とそのマネジメントについて探っていきます。

有給休暇を計画的に消化させるために何をすべきか

2019年4月1日より、原則として労働者に年5日以上有給休暇を消化させる義務が使用者に課されます。その前にまず、有給休暇付与の要件をおさらいしましょう。

労働基準法第39条第1項では、「使用者は、その雇入れの日から起算して六箇月間継続勤務し、全労働日の八割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した十労働日の有給休暇を与えなければならない。」と定めています。

すなわち、労働者の入社日によって有給休暇の付与時期が異なるため、誰に、いつ、何日の有給休暇を付与しているか、を適切に管理する必要があります。労働基準法は最低限のルールを定めたものなので、たとえば基準日を設けて、その日に有給休暇を一斉付与する(ただし、法の求める基準を下回らない)といった方法で、「誰に」と「いつ」を一元管理する方法も考えられます。

周囲の社員がなかなか有給休暇を取得しないため自分も取得しづらい、という理由で、有給休暇の消化が進まない会社も多いようです。まずは、役職者が積極的に有給休暇を取得して、有給休暇の消化が当たり前の会社に変化していくことが必要でしょう。

また、会社や所属部署の年間計画から繁閑期を見極め、閑散期に有給休暇の取得を推進することも一案でしょう。繁閑の差が少ない会社であれば、どの時期に有給休暇を取得しても業務への支障が少ないともいえます。「いつも忙しいから」という理由で、有給休暇の消化義務を果たせないのは、言い訳になりません。さらには今後、有給休暇の消化義務違反は罰金の対象になることも認識しておきましょう。

有給休暇の管理方法としては、勤怠管理システムを導入している会社でしたら、いずれ法改正に沿ったアップデートがなされることでしょうから、それを活用して管理していきましょう。
システムを導入していない会社向けの参考として、所定労働1日8時間の労働者に法律通り入社後6ヶ月経過してから法律通りの付与日数(1年目10日、2年目11日、3年目12日、4年目14日、5年目16日、6年目18日、7年目以降20日)した場合の、年間消化義務日数と時間有休消化時間を記録するイメージで「有給休暇管理表」(Excel) を用意しました。時間有休や半日有休は義務ではありませんが、法改正を機にわが社でも、という会社様の参考になれば幸いです。

有給休暇利用時の業務連携をどう行なうか

中小企業ではえてして業務が属人化しがちです。たとえば突然の事故によって、ある特定の労働者が長期間就業できなくなった途端に業務が成り立たない、ということはありませんでしょうか。もし、そのようなことが想定されるようでしたら、法改正を受けてじゅうぶん考慮していただきたい事項です。

前提として、労働者の有給休暇取得に際し、使用者は時季変更権の行使を除き、これを妨げることはできません。そのためにも使用者は、特定の労働者が有給休暇を取得しても業務が滞らないような事業計画、業務計画を策定すべきです。また、有給休暇が自由に取得できるか否かは、新しく入社する労働者にとっては関心が高く、仕事のモチベーションにも影響するやもしれません。
自分が休む日もあれば、チームの誰かが休む日もあることを踏まえ、業務の引継をする習慣をつける必要があります。また、日頃から業務の情報を周囲に共有しておくことで、引継が面倒だから休まないという考えも起きにくくなります。
 

ある事業所では、全社員が毎月最低1日、有給休暇を交代で取得し、休暇時の業務連携方法を決めるようにしたところ、属人化されていた業務が見直されたことで業務手順が効率化されたとのことです。誰がどこで詰まっているかを見ることができて、お互いがサポートし合えるようになったおかげで、チームの連帯感も醸成されるようになり、結果として毎月の有給休暇取得が「当たり前」になったそうです。毎月1日継続的に有給休暇を消化することで年間10日以上の有休消化に繋がるので、有給休暇消化の管理方法をどうするか、といった悩みは解消されることでしょう。

そうは言っても、いきなり毎月有給休暇は……、ということでしたら、せめて消化義務が求められている5日間だけでも、会社が計画的に付与する方法をとってみてはいかがでしょうか。

いくつか手段があり、[1]事業場全体の休業による一斉付与 [2]チーム別の交替制付与 [3]年次有給休暇付与計画表による個人別付与について、労使協定で定めることが可能です。
[1]では具体的な年次有給休暇の付与日を、[2]ではチーム別の具体的な年次有給休暇の付与日を、[3]では個人別に計画表を作成する時期、手続等を労使協定で定める必要があります(下表参照)。
 

【有給休暇の計画的付与方法】
  付与方法 労使協定で定める内容
1 事業場全体の休業による一斉付与 具体的な年次有給休暇の付与日
2 チーム別の交替制付与 チーム別の具体的な年次有給休暇の付与日
3 年次有給休暇付与計画表による個人別付与 個人別に計画表を作成する時期、手続等
[1]は事業場全体が休暇に入るため、休暇時の引継を気にしなくて良い特徴があります。[2]や[3]の場合は引継が発生するものの、誰がどの時期に休暇で不在にするかが事前に分かるので、計画的に業務引継ができるという特徴があります。
執筆者プロフィール
大東恵子氏(特定社会保険労務士)
大学卒業後、日商岩井株式会社(現在の双日株式会社)に入社。1997年に同社を退職後、独立。現在、東京、大阪をはじめとする5拠点に展開する、あすか社会保険労務士法人の代表社員として活躍中。社会保険手続きや給与計算はもちろん、企業の労務管理を総合的に支援している。
http://www.all-smiles.jp/