• ヘルプ
  • MYページ
  • カート

10月施行の「育児・介護休業法改正」 仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取・配慮の義務化

2025年6月9日更新

人事労務News&Topics

10月施行の「育児・介護休業法改正」 仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取・配慮の義務化

[矢島志織(特定社会保険労務士)]
2025年10月より、どの会社においても、仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取・配慮が事業主の義務になります。
本コラムでは、改正内容や実務ポイントなどについて解説します。

(1)仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取

事業主は、労働者が本人または配偶者の妊娠・出産等を申し出たとき、そして、労働者の子が3歳になるまでの適切な時期に、「勤務時間帯や勤務地、両立支援制度等の利用期間、労働条件の見直し等」(以下、「労働条件の見直し等」といいます)について、労働者の意向を個別に聴取することが求められます。
■実施のタイミング

①労働者が本人または配偶者の妊娠・出産等を申し出たとき

②労働者の子が3歳の誕生日の1か月前までの1年間
(1歳11か月に達する日の翌々日から2歳11か月に達する日の翌日まで)

■聴取事項

①勤務時間帯(始業、終業の時刻)

②勤務地(就業の場所)

③両立支援制度等の利用期間

④仕事と育児の両立に資する就業の条件(業務量、労働条件の見直し等)

※両立支援制度は、所定外労働・時間外労働・深夜業の制限に関する制度

■聴取の方法

①面談(オンライン可) ②書面 ③FAX ④電子メール等

※③、④は労働者が希望した場合

(2)聴取した労働者の意向についての配慮

事業主は、(1)により聴取した労働条件の見直し等に関する労働者の意向に基づき、労働条件の見直しや業務量の調整など、適切な配慮を行なうことが求められます。

(3)実務のポイント

2回の実施のタイミング、意向聴取についての流れは、以下のとおりです。

○個別の意向聴取の方法について

一般的には人事部が行なうことが想定されていますが、人事部でなくとも、事業主からの委任を受けていれば、所属長や直属の上司が実施しても差し支えありません。
直属の上司が対応することで、労働者の意向を引き出しやすくなる可能性もある一方で、逆に、関係性によっては意向を表明しにくくなるケースも考えられます。
そのため、直属の上司が意向聴取を行なう場合には、制度の趣旨や適切な対応方法について、あらかじめ十分に理解しておくことが重要です。

○聴取した意向への配慮について

事業主には、労働者から聴取した意向の内容を踏まえ、対応の可否について真摯に検討を行なうことが求められます。
とはいえ、すべての意向にそのまま応えることが現実的に難しい場合もあるでしょう。
事業主としても、業務体制や人員状況などを踏まえたうえで、自社の実情に応じて可能な範囲で配慮を行なうことが基本となります。
したがって、必ずしも労働者の意向どおりに対応しなければならないわけではありません。
検討の結果、意向に沿った対応が困難な場合には、その理由を労働者に分かりやすく説明するなど、丁寧かつ誠実な対応が求められます。
このような姿勢こそが、信頼関係の維持・構築につながるものといえるでしょう。

運用に向けて、厚生労働省のWord形式の参考様式も参考にしてみてください。

(4)個別周知・意向確認などの義務のまとめ

2025年10月施行の改正育児・介護休業法により、以下の2回にタイミングにおいて、個別周知や意向確認など、事業主が対応しなければならない項目が複数定められています。
■実施のタイミング

①労働者が本人または配偶者の妊娠・出産等を申し出たとき

②労働者の子が3歳の誕生日の1か月前までの1年間

以下の以前のコラムを参考に運用を進めていけるよう準備していきましょう。 2025年10月施行の改正育児・介護休業法により、事業主は、労働者一人一人の状況に応じた柔軟な対応が求められるようになります。
単なる制度の提供だけなく、労働者のニーズに寄り添った個別の対話と信頼関係の醸成を通じて、いかにして“働きやすい職場環境”を構築していくか、企業の真価を問われる時代になっていくのだと感じます。
執筆者プロフィール

矢島志織氏(特定社会保険労務士)
社会保険労務士法人 志‐こころ‐特定社労士事務所 代表社員/ISO30414リードコンサルタント/学校法人産業能率大学 非常勤講師/健康経営エキスパートアドバイザー

SEとして人事系システム開発に従事後、中小企業や上場企業の人事部を経験し、勤務社労士を経て開所。豊富な現場経験を強みに、企業全体の労務リスクを分析し、人事労務DD、IPO支援、人事制度、就業規則の見直し等を行う。現場の声を聞きながら、人事労務セミナーや企業研修講師を行う等、多数の講演実績あり。著書として『労働条件通知書兼労働契約書の書式例と実務』(日本法令)、『IPOの労務監査 標準手順書』(日本法令)など。
志-こころ- 特定社労士事務所

連載「人事労務News&Topics」

企業実務サポートクラブとは?詳しくは資料ダウンロード
1冊無料お試しはコチラ
企業実務サポートクラブとは?詳しくは資料ダウンロード
1冊無料お試しはコチラ