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緊急連絡網の作成時に注意したい個人情報の取扱い

12月の総務豆知識

緊急連絡網の作成時に注意したい個人情報の取扱い
最終更新日:2023年11月27日
以前は多くの会社が、従業員個人の住所や電話番号等を記載した、いわゆる「従業員(社員)名簿」を社内で作成・配付していました。
しかし、昨今は個人情報保護の観点から、名簿の作成をやめたり、配付先を限定したりするなど、個人情報の取扱いに敏感な会社が増えています。
一方、従業員個人の固定電話番号、携帯電話番号、メールアドレスが含まれる緊急連絡網については、災害や緊急事態が発生した時に業務上必要なものであり、いまでも作成・配付している会社が少なくないようです。
以下、緊急連絡網を作成する際の個人情報の取扱いを確認してみましょう。

(1)個人情報の取扱いの原則

緊急連絡網に記載する氏名や住所、電話番号、メールアドレスは個人情報です。
個人情報取扱事業者(個人情報データベース等を事業の用に供している者)は、個人情報を取り扱うにあたって、その利用目的をできる限り特定しなければならないとされています。
また、個人情報取扱事業者は、あらかじめ本人の同意を得ずに、特定された利用目的の達成に必要な範囲を超えて、個人情報を取り扱ってはならないとされています。
したがって、この原則に従えば、緊急連絡網の作成にあたっては、従業員に緊急連絡網の作成のために個人情報を利用することを明示して、当該従業員から同意を得ておく必要があります。
なお、当然ながら、緊急連絡網の個人情報についても流出・悪用等がないように注意しなければなりません。

(2)従業員の同意が得られない場合

会社は、従業員に対し、強制的に私用の電話番号やメールアドレスを開示させることはできないと考えられます。従業員の側からすれば、個人情報の提供・開示を拒否できるということです。
仮に、就業規則に根拠規定があり、手続き上は緊急連絡先の提供・開示拒否に対する懲戒処分が可能であったとしても、懲戒処分をちらつかせて個人情報を取得しようとすれば、信頼関係が崩れてしまうでしょう。
個人情報の漏洩や悪用による被害が日常的に発生している状況で、業務上で必要な緊急連絡のためとはいえ、個人情報の開示に不安を覚える従業員側の心情も理解しなければなりません。
会社としては、緊急連絡網を作成する目的やメリットなどを丁寧に説明し、慎重に個人情報を取り扱う姿勢を示すことで従業員の不安を払拭し、協力を得られるようすることが大切です。
どうしても同意を得られない場合は、当該従業員に対し、会社所有の携帯電話を貸与するような対応も考えられるでしょう。

(3)安否確認システム(ツール)の活用

安否確認システム(ツール)とは、災害時に会社が従業員の安否状況を確認するための仕組みです。
基本的な機能は、登録された従業員の連絡先に安否確認情報を一斉送信(配信)し、受信した従業員が自分の安否情報を回答することで、安否確認を行なうというものです。
電子メールのほか、スマートフォンのアプリやSMS(ショートメッセージサービス)、SNSなど、多様な通知手段に対応しています。
安否確認システム(ツール)に登録した連絡先は、本人以外閲覧できないように設定すれば、他の従業員等の目に触れることはありません。
多くのシステム(ツール)がありますから、導入にあたっては自社の拠点数、従業員数、コストなど、さまざまな要素を検討する必要があります。

(4)緊急連絡手段を確保する義務

東日本大震災を受けて東京都は、帰宅困難者対策を総合的に推進する「東京都帰宅困難者対策条例」を制定・施行しています。
この条例の第4条第2項では、事業者の責務を次のように定めています。
「事業者は、あらかじめ、大規模災害の発生時における従業者との連絡手段の確保に努めるとともに、家族その他の緊急連絡を要する者との連絡手段の確保、待機し、又は避難する場所の確認、徒歩による帰宅経路の確認その他必要な準備を行うことを従業者へ周知するよう努めなければならない。」
あくまでも努力義務ではありますが、東京都に拠点を置いているかどうかに関係なく、すべての事業者はこの義務を負うことを認識すべきです。
従業員の個人情報の取扱いには十分に留意したうえで、緊急時の連絡方法を確保しておくことは、会社のためにも、そして従業員やその家族等のためにも、重要なことであるといえます。

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