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脳・心臓疾患の労災認定基準が改正されました

2021年9月28日更新

人事労務News&Topics

脳・心臓疾患の労災認定基準が改正されました

[矢島志織(特定社会保険労務士)]
脳・心臓疾患の労災認定基準が約20年ぶりに改正され、令和3年9月15日から施行されています。
本コラムでは、具体的な改正内容を解説していきます。

(1)改正の概要

脳・心臓疾患の労災認定(いわゆる過労死認定)は、下記の業務による明らかな過重負荷を受けたことで発症したかどうかが認定要件とされています。
①長期間にわたる著しい疲労の蓄積をもたらす過重な業務(長期間の過重業務)
②発症に近接した時期において過重な業務(短期間の過重業務)
③異常な出来事に遭遇したときの業務
今回の改正では、業務の過重性の評価にあたって、労働時間に限らず、労働時間の長さ等で表される業務量や業務内容、作業環境等を総合的に判断する必要があるとして、認定基準の明確化などが行なわれました。

(2)「長期間の過重業務」に関する改正

「長期間の過重業務」における過重性の評価について、労働時間と労働時間以外の負荷要因を総合評価して労災認定することが明確化されたほか、労働時間以外の負荷要因が見直されました。

○労働時間についての基準の明確化

従来の認定基準では、発症前1ヵ月におおむね100時間または発症前2~6ヵ月間平均で月80時間を超える時間外労働が認められる場合に、業務と発症との関連性が強いと評価できるとされていました。改正により、従来の基準に至らなくても、これに近い時間外労働が認められ、さらに一定の労働時間以外の負荷が認められる場合には、業務と発症との関連性が強いと評価できるということが明示されました。
改正前の基準(改正後も維持) 新たに認定基準として追加
発症前1ヵ月に概ね100時間または2~6ヵ月間平均で月80時間を超える時間外労働は、発症との関連性は強い 左記の水準に至らないが、
これに近い時間外労働


一定の労働時間以外の負荷

→ 業務と発症との関連性は強い

○労働時間以外の負荷要因の見直し

労働時間以外の負荷要因について、「勤務間インターバルが短い勤務」、「身体的負荷を伴う業務」などが追加されました。
労働時間以外の負荷要因(太字は追加項目)
勤務時間の不規則性 拘束時間の長い勤務
休日のない連続勤務
勤務間インターバルが短い勤務
不規則・交代制・深夜勤務
事業場外における移動を伴う業務 出張の多い業務
その他事業場外における移動を伴う業務
心理的負荷を伴う業務 日常的な心理的負荷を伴う業務や心理的負荷を伴う具体的出来事(仕事の失敗、過重な責任の発生、地位の変化、ハラスメント、対人関係のトラブル等)
身体的負荷を伴う業務 重量物の運搬作業等身体的負荷が大きい業務等
作業環境 温度環境
騒音
なお、副業・兼業時における業務の過重性の判断については、複数の就業先における労働時間を通算して評価し、労働時間以外の負荷要因についても、複数の就業先における負荷を合わせて評価します。

(3)「短期間の過重業務」に関する改正

「短期間の過重業務」における過重性の評価について、業務と発症との関連性が強いと判断できるケースとして、「発症前おおむね1週間に継続して深夜時間帯に及ぶ時間外労働を行うなど過度の長時間労働が認められる場合」や「発症直前から前日までの間に特に過度の長時間労働が認められる場合」などが例示されました。

(4)対象疾病の追加

認定基準の対象疾患に、「重篤な心不全」が新たに追加されました。
脳血管疾患 虚血性心疾患等
・脳内出血(脳出血)
・くも膜下出血
・脳梗塞
・高血圧性脳症
・心筋梗塞
・虚心症
・心停止(心臓性突然死を含む)
・重篤な心不全
・大動脈解離
労働時間や労働時間以外の負荷要因を企業全体で見える化することで、より風通しの良い組織作りにもつながります。この機会に、改めて自社の従業員の労働状況を確認してみてはいかがでしょうか。
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連載「人事労務News&Topics」

執筆者プロフィール

矢島志織氏(特定社会保険労務士)
社会保険労務士法人 志‐こころ‐特定社労士事務所 代表社員/KOKORO株式会社代表取締役。SEとして人事系システム開発に従事後、中小企業や上場企業の人事部を経験し、勤務社労士を経て独立。豊富な現場経験を強みに、企業全体の労務リスクを分析し、人事労務DD、IPO支援、人事制度、就業規則の見直し等を行う。また現場の声を聞きながら、人事労務セミナーや企業研修講師を行う等、多数の講演実績あり。著書として『労働条件通知書兼労働契約書の書式例と実務』(日本法令)、『IPOの労務監査 標準手順書』(日本法令)など。
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