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[第1回] 受取配当金はどうして「所得」にならないの?

2019年6月20日更新

タックスロイヤーが教える「法人税」のロジック

[第1回] 受取配当金はどうして「所得」にならないの?

[西中間 浩氏(弁護士、税理士)]
ひとくちに税金といってもいろんな種類がありますが、大きくは、「所得課税」と「資産課税」、「消費課税」の3つに分けることができます。
「所得課税」は、その名のとおり「所得」に対する課税です。会社などの所得 (儲け)に課税される「法人税」も、所得課税のひとつです。

ところで、法人税における「所得」とは何でしょうか。
そりゃ、売上げから経費を除いた“利益”じゃないのか?
そうですね、法人税が課税される「所得」というと、決算書の損益計算書でいうところの「当期純利益」がこれに当たりそうです。ただし、当期純利益がそのまま法人税における「所得」になるわけではありません。

法人税でいうところの「所得」は、「課税の公平」を図るといった法人税法の要請などから、これに一定の修正が入ったものになります。

受取配当金の「益金不算入」とは

たとえば、Aという会社が投資先から配当金を受け取った場合、決算書を作成する際には収益として計上し、損益計算書の「当期純利益」に含まれます。しかし、法人税務上はこれをそのまま「所得」としては認識しません。

というのも、こうした配当金は、配当を出す側の法人が、法人税を納税したあとの余った剰余金のなかから支払うのですが、配当金を受け取った会社のほうで「所得」に入れて法人税を課税してしまうと、ひとつの法人が稼いだ儲けに何回も重複して課税することになってしまい、不合理だからです。

受け取った法人の側でどのように調整するかというと、持株割合に応じて扱いが変わってきます。持株割合が3分の1を超えていると全額、5%超から3分の1以下だと半額、5%以下だと2割を所得にカウントしないこととなっています(「益金不算入」として減額する調整を行ないます)。
なぜ株式の保有割合によって違いが? 重複課税が問題なんだから、別に保有割合で扱いを変えなくてもいいと思うんですが……。
それは、政策的な配慮によるものです。

つまり株式を3分の1超も所有しているということは、別の会社ではあっても根っこは同じ一つのグループ企業であるといえます。
いわば大きな会社のなかに複数の小さな会社がある、とみることができるわけで、そうした会社間の配当金に重複して課税すると、親会社としては子会社を作るより支店を作って利益を本部に移転させたほうがトクだということになってしまい、別会社を作って行うグループ経営を阻害する恐れがあります。
それは、支店よりも子会社を作ったほうが、会社にとって望ましいということですか?
たとえば、支店ではなく別会社を作ることで、親会社としては事業ごとに損益を明確にでき、それに応じて給与体系や人事の取扱いを別にすることができます。また、倒産のリスクが別事業に及ばないようにすることが可能となるなど、さまざまなメリットを享受できます。
そういったメリットを受けやすいように配慮してあげましょう、というわけです。

そこで3分の1超を保有しているグループ会社からの配当金については、こういったグループ全体の経営を阻害しないように、配当の形で利益移転をしてもまったく税金がかからないようにしています。
しかし、そこまでの持株割合はなく、どちらかというと投資目的で持っているような株式からの配当については、もともと儲けることを目的として投資しているわけですから、二重課税になってしまうことを完全に回避しなくても課税の公平に反するとまではいえませんよね。

ということで、益金不算入の割合は、持株割合に応じて段階的に下げられているわけです。
■受取配当金の益金不算入の割合
  1. 株式保有割合が100%(完全子法人株式等)…100%益金不算入
  2. 株式保有割合が3分の1超100%未満(関連法人株式等)…100%益金不算入(負債利子控除あり)
  3. 株式保有割合が5%超3分の1以下(その他の株式等)…50%益金不算入
  4. 株式保有割合が5%以下(非支配目的株式等)…20%益金不算入
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執筆者プロフィール

西中間 浩氏(弁護士、税理士)
外務省勤務を経て、東京大学大学院法学政治学研究科法曹養成専攻(ロースクール)修了。2011年1月より、鳥飼総合法律事務所弁護士。第二東京弁護士会(民事介入暴力対策委員会、国際委員会)所属。2019年5月より、税理士登録。主な取扱分野は、税務、企業法務、事業承継・相続など。
著書に『日本一やさしい税法と税金の教科書』(日本実業出版社)がある。
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