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専門家コラム Professional Eye

2020年9月17日更新

人事労務News&Topics

副業・兼業者の労災保険給付に係る改正のポイント

[矢島志織(特定社会保険労務士)]

労務に関する法改正情報などの最新ニュースや、注目の話題をピックアップ。専門家がわかりやすく解説します。

2020年9月1日より副業・兼業者の労災保険の取扱いが変更になりました。先日、具体的な取扱いに係る通達等も公表されましたので解説していきます。

変更点① 給付基礎日額の算出方法の変更

従来、複数の会社で働いている労働者の労災保険については、労災事由が発生した会社で支払われた賃金のみをもとに保険給付の金額が決まっていましたが、改正により、全ての会社で支払われた賃金額を合算して給付額が決まることになりました。

【賃金額の合算例】

今回の改正で保険給付額の算定方法が変更されるのは、休業(補償)・障害(補償)・遺族(補償)、傷病(補償)年金、葬祭料、葬祭給付になります。これらの労災申請は、書式も変更になっていますので、注意しましょう。
 

・複数の会社で働いている労働者とは?

今回改正の対象となるのは、「被災した(業務や通勤が原因でけがや病気などになったり死亡した)時点で、事業主が同一でない複数の事業場と労働契約関係にある労働者」とされています。
つまり、労働契約を2つ以上締結している場合に適用されるものであり、一方は労働契約で、もう一方が個人事業主や経営者というケースについては、この取扱いは対象外ということになります。ただし、個人事業主や経営者として労災保険に特別加入している場合は、対象になりますので注意が必要です。
<参考>
「複数事業労働者への保険給付分かりやすい解説」(厚生労働省、PDF)
https://www.mhlw.go.jp/content/000662505.pdf

変更点② 複数の会社等の業務上の負荷を総合的に評価

これまで、業務上の負荷(労働時間やストレス等)が業務災害に当たるか否かについて、1つの事業場のみの負荷を評価して判断がなされてきました。今回の改正により、複数の事業の業務を要因とする傷病等(負傷、疾病、障害又は死亡)についても労災保険給付の対象となる「複数業務要因災害」が創設され、1つの事業場のみでは業務上の負荷が業務災害に当たらない場合、複数の事業場等の負荷を総合的に評価し、判断されることになりました。

たとえば、業務の過重性の判断については、「異なる事業における労働時間を通算して評価する」ことになります。これにより、1つの事業場で残業時間が40時間と残業時間の上限内に収まっていたとしても、他の事業場での残業時間が60時間ある場合、残業時間が計100時間となり、過重業務と評価される可能性が出てくることになります。

副業・兼業を認めている会社はこれらの改正に伴い、副業・兼業先の会社の労働時間や業務の内容など、労働者の負荷となりうる事項を把握することが運用上とても大切になってきます。副業・兼業申請書や管理簿等により、会社や労働条件等の変更や状況の変化を都度申し出てもらうなど、労働者の状況把握ができる仕組みを作っていくこと、就業規則に根拠となるルールを設けていくことが労務管理のポイントとなるでしょう。
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連載「人事労務News&Topics」

執筆者プロフィール
矢島志織氏(特定社会保険労務士)
社会保険労務士法人 志‐こころ‐特定社労士事務所 代表社員/KOKORO株式会社代表取締役。SEとして人事系システム開発に従事後、中小企業や上場企業の人事部を経験し、勤務社労士を経て独立。豊富な現場経験を強みに、企業全体の労務リスクを分析し、人事労務DD、IPO支援、人事制度、就業規則の見直し等を行う。また現場の声を聞きながら、人事労務セミナーや企業研修講師を行う等、多数の講演実績あり。著書として『労働条件通知書兼労働契約書の書式例と実務』(日本法令)、『IPOの労務監査 標準手順書』(日本法令)など。
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