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専門家コラム Professional Eye

2020年9月15日更新

サポートクラブ 法務News&Topics

公益通報者保護法の改正

[今津泰輝氏(弁護士)][坂本 敬氏(弁護士)]

法務に関する法改正情報などの最新ニュースや、注目の話題をピックアップ。専門家がわかりやすく解説します。

2020年6月8日、従業員数300人超の事業者に、内部通報体制の整備を義務付けることなどを内容とする、公益通報者保護法の改正法が成立しました。改正法は、公布の日(2020年6月12日)から2年以内に施行されます。
改正の目的は、事業者の不祥事が後を絶たないことから、違法行為を早期に是正することにより、被害の防止を図るためとされています。
本コラムでは、主要な改正点と実務対応について紹介します。

公益通報者保護法の概要

公益通報者保護法は、事業者における違法行為を通報した労働者に対する、不利益な取扱いの禁止などを定めた法律です。
同法において保護される「公益通報」に該当するためには、通報の主体は労働者であること、通報の内容は刑事罰につながる一定の行為であること、などの要件が設けられています。
通報先は、次の3つに分類されています。

①当該事業者(事業者があらかじめ定めた外部窓口も含まれる)

②行政機関

③その他(報道機関など)

内部通報が優先されるという考え方から、②、③へ行くほど、保護を受けるための要件が厳しく定められています。
たとえば、①当該事業者に対する通報は、「通報対象事実が生じ、またはまさに生じようとしていると思料する場合」で足りるのに対し、②行政機関に対する通報は、「通報対象事実が生じ、またはまさに生じようとしていると信ずるに足りる相当の理由がある場合」であることが必要とされています。

主要な改正点

内部通報体制整備などの義務付け

従業員数300人超の事業者には、内部通報体制の整備などの措置をとることが義務付けられます。なお、従業員数が300人以下の事業者には、努力義務が課されます。
とるべき措置の具体的な内容については、今後、指針が策定されますが、以下のような内容が想定されています。

・通報窓口の設定

・担当者の指定

・通報に基づく調査・是正措置

・通報を理由とした不利益取扱いの禁止・通報者に関する情報漏洩の防止

・内部規程の整備・運用

以上の事業者の義務については、行政措置(助言・指導、勧告、勧告に従わない場合の公表)も定められています。

担当者の守秘義務の新設

安心して通報できるようにするという観点から、事業者において、通報の受付や事実関係の調査を担当する者には、通報者を特定させる情報についての守秘義務が設けられるとともに、違反した場合の刑事罰も定められています。

通報の主体の拡大(退職者・役員の追加)

通報の主体は、改正前は当該事業者の労働者に限られていましたが、当該事業者の退職者(退職後1年以内)・役員も追加されます。
役員については、違法行為について調査および是正する権限を有するため、行政機関など外部への通報を行なう場合には、原則として、先に社内での調査・是正措置をとることが必要となります。

通報の内容の拡大

通報の内容は、改正前は刑事罰につながる行為に限られていましたが、行政罰の対象にとどまる行為も追加されます。

外部への通報の保護要件の緩和

行政機関や報道機関など外部に対する通報の保護要件が緩和されます。
たとえば、行政機関に対する通報については、通報者の氏名や通報対象事実等を記載した書面を提出する場合には、「通報対象事実が生じ、もしくはまさに生じようとしていると思料する場合」で足りると定められています。

実務対応

特に、従業員数300人超の事業者である場合には、改正法の施行までに、以下のような対応が必要となります。

内部通報体制が未整備である場合

現時点で、内部通報窓口を設置していないなど、内部通報体制が未整備である場合には、内部通報体制の整備が必要となります。

退職者・役員が通報窓口の対象者に含まれていない場合

内部通報窓口が設置されているものの、退職者・役員が、通報窓口の対象者に含まれていない場合には、対象者に含めておく必要があります。
なお、改正法の施行にかかわらず、リスクを早期に発見するという観点からは、通報窓口の対象者は幅広く設定しておくことが有益です。

担当者の守秘義務の新設への対応

担当者の守秘義務には、刑事罰も設けられていますので、通報者を特定させる情報の取扱いには、十分に注意するよう担当者に周知することが必要です。
なお、通報の内容によっては、通報者を特定させる情報またはそれに該当する可能性がある情報を開示しなければ、調査が困難である場合もあります。そのような場合には、通報者から、開示について承諾を得ておくことが必要となります。
担当者が守秘義務に反して情報を漏らすことがないよう、マニュアルを整備するなどして、担当者の対応技術の向上を図ることも有益です。

最後に

改正法によって、行政機関など外部への通報の保護要件も緩和されますので、現在よりも、外部への通報が相対的に増える可能性があります。
事業者にとっては、内部通報があれば早期に問題に対処できたにもかかわらず、内部通報がなく外部への通報があったことにより問題が大きくなってしまった、ということもあり得ます。
そのような観点からも、内部通報体制を整備しておくことは有益です。
消費者庁によれば、来年(2021年)中に指針や各種ガイドラインが作成される予定とのことですので、内部通報体制の整備にあたっては、それらを参考にすることが考えられます。
執筆者プロフィール
今津泰輝氏(弁護士)
米国を本拠地とする大規模ローファームを経て、平成21年に今津法律事務所(現弁護士法人今津法律事務所)を開設し約10年。『なるほど図解 会社法のしくみ』(中央経済社)等著作、講演多数。①会社法・取締役の関係、②契約書作成・商取引・規定作成、③訴訟・トラブル解決支援、④中国ビジネス・海外との商取引等に取り組んでいる。


坂本 敬氏(弁護士)
平成27年1月に今津法律事務所(現弁護士法人今津法律事務所)入所。「判例から学ぼう!管理職に求められるハラスメント対策」(エヌ・ジェイ出版販売株式会社)等講演、著作多数。①会社法・取締役の関係、②契約書作成・商取引・規定作成、③訴訟・トラブル解決支援、④中国ビジネス・海外との商取引等に取り組んでいる。

弁護士法人今津法律事務所
http://www.imazulaw.com/