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不妊治療と仕事の両立支援について

2021年7月26日更新

人事労務News&Topics

不妊治療と仕事の両立支援について

[矢島志織(特定社会保険労務士)]
2021年7月9日、厚生労働省より、不妊予防に向けた取り組みを推進するための「不妊予防支援パッケージ」が公表されました。
これは、昨年示された「全世代型社会保障改革の基本方針」において、安心して子どもを産み育てられる環境をつくり、女性が健康で活躍できる社会を実現していくための取組みのひとつとして「不妊治療の支援」が掲げられたことなどを受け、策定されたものです。

本コラムでは、不妊予防支援パッケージによる、働く女性に向けての支援の内容と、不妊治療と仕事の両立を支援するための職場づくりについて解説します。

(1)不妊予防の支援の必要性について

不妊予防支援パッケージでは、不妊予防の支援の必要性として以下のようなものが挙げられています。

・20代、30代の多くが月経痛を抱えていること

・月経痛で受診した女性のうち子宮内膜症や子宮筋腫等を原因とする月経困難症(月経 痛や体調不良など)である割合は、20代3割、30代5割、40代7割であること

・働く女性の半数弱は、月経異常を感じても婦人科等を受診しないこと

これらは卵巣がんや不妊につながるリスクがあり、早期発見・治療、重症化予防を行なうことが重要です。
こういった状況を踏まえ、女性のライフステージや生活環境に寄り添った支援を行なうことで気づかれにくい不妊リスクをなくしていくことを目的として、不妊予防支援パッケージが策定されました。

(2)働く女性に向けての支援

不妊予防支援パッケージでは、働く女性に向けた具体的な支援内容として以下のものが挙げられました。

○月経困難症に悩む女性労働者への配慮等(婦人科等を受診する場合の特段の配慮、相談しやすい職場環境の整備等)についての事業主への要請

○職場における相談体制の拡充
・産業医等に対する研修の拡充
・中小企業で働く女性の相談ニーズへの対応

・産業保健総合支援センターと、女性健康支援センターや不妊専門相談センターとの連携強化

○様々な機会を活用した女性の健康課題に関する情報発信の強化

・職場の定期健診での子宮頸がん検診や産婦人科の定期受診を促すリーフレットの配布

・事業主・労働者向けセミナーの開催、企業における取組事例の収集・提供

・健康経営の啓発強化

では、企業は今後、どのように職場づくりをしていくのがよいのでしょうか。

(3)不妊治療と仕事の両立支援

不妊治療と仕事の両立支援について、とても参考になるマニュアルが厚生労働省から出されています。 企業のルールづくりとして、不妊治療のための休暇・休職制度や年次有給休暇の時間単位取得制度、労働時間制度を柔軟にするためのフレックスタイム制度や時差出勤等について、取り組み事例も挙げながら解説されています。
またマニュアルでは、職場づくりのためのツールとして、“不妊治療連絡カード”も紹介されています。不妊治療連絡カードは、不妊治療を受けているまたは今後予定している社員が、会社に不妊治療中であることを伝えたり、不妊治療と仕事の両立に関する理解と配慮を求めるためのツールです。 そのほか、不妊治療と仕事の両立支援のために休暇制度、労働時間制度を整備していこうと考えている企業には、「両立支援等助成金(不妊治療両立支援コース)」を活用するのもおすすめです。このような助成金制度等も上手に活用しながら、不妊治療を受けながら働き続けられる職場づくりを進めていかれるのはいかがでしょうか。
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2024年5月8日(水)~5/10(金) 東京ビッグサイト

連載「人事労務News&Topics」

執筆者プロフィール

矢島志織氏(特定社会保険労務士)
社会保険労務士法人 志‐こころ‐特定社労士事務所 代表社員/KOKORO株式会社代表取締役。SEとして人事系システム開発に従事後、中小企業や上場企業の人事部を経験し、勤務社労士を経て独立。豊富な現場経験を強みに、企業全体の労務リスクを分析し、人事労務DD、IPO支援、人事制度、就業規則の見直し等を行う。また現場の声を聞きながら、人事労務セミナーや企業研修講師を行う等、多数の講演実績あり。著書として『労働条件通知書兼労働契約書の書式例と実務』(日本法令)、『IPOの労務監査 標準手順書』(日本法令)など。
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