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<改正育児・介護休業法>雇用環境整備・個別の周知と意向確認の措置に関する実務対応(1)

2021年11月11日更新

人事労務News&Topics

<改正育児・介護休業法>雇用環境整備・個別の周知と意向確認の措置に関する実務対応(1)

[矢島志織(特定社会保険労務士)]
育児・介護休業法の改正に伴い、2022年4月より雇用環境整備等の措置が義務化されることについて、以前のコラムでお伝えしました。
このたび、厚生労働省より事業主向けの説明資料が公開され、これらの措置について、より具体的な実務対応のポイントが明らかになりましたので、2回に分けて解説していきます。

雇用環境整備の実務ポイント

以前のコラムでお伝えした通り、育児休業等を取得しやすい雇用環境整備として、4つの措置【①研修の実施 、②相談窓口の設置、③自社の育休等取得事例の収集・提供、④制度と育休取得促進に関する方針の周知】のいずれかを講じることが義務化されます。

今回、これらの措置について、具体的な実務対応のポイントが以下の通り示されました。

①研修の実施

・全労働者を対象とすることが望ましいが、少なくとも管理職については、研修を受けたことがある状態にすること。

②相談窓口の設置

・相談窓口を形式的に設けるだけでなく、実質的な対応が可能な窓口が設けられていること。

・労働者に対する窓口の周知等により、労働者が利用しやすい体制を整備しておくこと。

③自社の育休等取得事例の収集・提供

・自社の育児休業の取得事例を収集し、当該事例の掲載された書類の配布やイントラネットへの掲載等により、いつでも労働者が閲覧できる状態にすること。

④制度と育休取得促進に関する方針の周知

・育児休業に関する制度および育児休業の取得の促進に関する事業主の方針を記載したものを、事業所内やイントラネットへ掲示すること。

また、「③自社の育休取得の事例提供」について、参考様式として事例の記載例も公開されました。「取得したいと思ったきっかけ」、「配偶者の反応」、「上司・同僚の反応」、「育児休業を取得した感想」「これから育児休業を取得する男性職員へのメッセージ」など、様々な項目が設けられています。
新しい取り組みに戸惑いもあるかもしれませんが、このような労働者の声が集まることにより、風通しの良い組織づくりにも繋がることでしょう。
また、こういった声を採用活動のアピールポイントに活用してもよいかもしれません。


<取得事例サンプル>

※「育児休業取得事例記載例」(厚生労働省)をもとに作成

育児休業取得事例記載例

育児休業の取得事例

所属:製造部 企画課
氏名:厚労 太郎さん
取得期間:子の出生直後から3か月間

~我が社、5人目の男性育児休業取得者~

(取得したいと思ったきっかけ)

例)今回2人目の出産で育児休業を取得させていただきました。
1人目の出産で妻の大変さを感じたため、取得したいと思いました。

(配偶者の反応)

例)とても喜んでもらえました。

(上司・同僚の反応)

例)育児休業を取得することを親身にサポートしていただきました。

(取得にあたって準備したこと(仕事面))

例)取引先関係者への説明等を事前に行ないました。
また、業務の見える化を徹底し、何があっても万全な状態まで準備しました。

(取得にあたって準備したこと(家庭・子育て面))

例)仕事面の準備に追われていたので、家庭面ではとくに準備していませんでした。

(育児休業中どう過ごしたか)

例)育児に慣れていないこともあり、忙しい日々で、睡眠時間は仕事をしている時よりもとれない日もありました。

(復帰後の働き方と育児について)

例)育児休業を取得したことで、育児サポートの大切さを知り、復帰後において“いかに効率的に育児と仕事を両立していくか”という意識へと繋がりました。
効率的に仕事を行なう工夫が部署全体の業務効率に繋がるということも意識しながら、今は仕事をしています。

(育児休業を取得した感想)

例)育児休業を取得させていただきましてありがとうございました。
育児という限られた時間を過ごせたお陰で子どものため・家族のためにもっと仕事を頑張ろうと思うことができ、自分自身の意識の成長を感じるとともに、人生へのモチベーションが大きく変わりました。
このような時間をいただいたこと、とても感謝しております。

(これから育児休業を取得する男性職員へのメッセージ)

例)自分の人生観を変えた時間になりました。
はじめは、育児休業終了後、自分の居場所があるか等不安もありましたが、○○社長、上司や同僚の皆さんが復帰を温かく迎えて下さり、気持ちよく仕事ができました。自社で働けて本当に良かったです。
これから育休を取得する方、体験談などお話ししますので気軽に声をかけてください。

【上司からのメッセージ】
当課での男性育休取得は初めてでしたが、厚労さんの育休取得が業務分担の見直しと見える化につながり、課内全体で生産性を意識した働き方が進むきっかけとなりました。ぜひ今後も、育児と仕事を両立して、若手社員のモデルとなってもらいたいと思います。
次回は、個別の周知・意向確認の措置の実務ポイントについて詳しく解説していきます。
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2024年5月8日(水)~5/10(金) 東京ビッグサイト

連載「人事労務News&Topics」

執筆者プロフィール

矢島志織氏(特定社会保険労務士)
社会保険労務士法人 志‐こころ‐特定社労士事務所 代表社員/KOKORO株式会社代表取締役。SEとして人事系システム開発に従事後、中小企業や上場企業の人事部を経験し、勤務社労士を経て独立。豊富な現場経験を強みに、企業全体の労務リスクを分析し、人事労務DD、IPO支援、人事制度、就業規則の見直し等を行う。また現場の声を聞きながら、人事労務セミナーや企業研修講師を行う等、多数の講演実績あり。著書として『労働条件通知書兼労働契約書の書式例と実務』(日本法令)、『IPOの労務監査 標準手順書』(日本法令)など。
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