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職場における労働衛生基準が変わりました

2021年12月27日更新

人事労務News&Topics

職場における労働衛生基準が変わりました

[矢島志織(特定社会保険労務士)]
2021年12月1日、「事務所衛生基準規則及び労働安全衛生規則の一部を改正する省令」が公布され、職場におけるトイレの設置基準や照明の基準等が見直されました。今回は、具体的な改正内容について解説していきます。

(1)トイレの設置基準の見直し

従来、事業場のトイレについては以下のような基準が設けられていました。
・男性用と女性用とを区別すること
・男性用大便所の便房の数は、同時に就業する男性労働者60人以内ごとに1個以上
・男性用小便所の便房の数は、同時に就業する男性労働者30人以内ごとに1個以上
・女性用便所の便房の数は、同時に就業する女性労働者20人以内ごとに1個以上 等
今回、男性用と女性用に区別して設けるという原則は維持しつつ、新たに「独立個室型の便所」(※)が法令で位置付けられ、少人数の事業場における例外や「独立個室型の便所」を付加的に設ける場合の取扱いが示されました。

○少人数の事業場における例外
同時に就業する労働者が常時10人以内である場合、建物の構造などの理由から男性用と女性用に区別することが難しい場合については、例外として、「独立個室型の便所」を設けることで足りるものとされました。

○「独立個室型の便所」を付加的に設ける場合の取扱い
男性用と女性用に区別したトイレを設置したうえで、「独立個室型の便所」を設置する場合、男性用と女性用のトイレをそれぞれ一定程度設置したものとして取り扱うことができます。
具体的には、トイレの設置数を算定する際に基準となる労働者の数について、「独立個室型の便所」1個につき男女それぞれ10人ずつ減らすことができるとされました。

(※)「独立個室型の便所」・・・男性用と女性用の区別をしないプライバシーが確保されている便所で、全方向を壁等で囲まれ、扉を内側から施錠できる構造であるもの。

(2)救急用具の品目の削除

事業場に備えるべき負傷者の手当てに必要な救急用具・材料について、具体的な品目の規定が削除されました。
産業医の意見や衛生委員会での審議等の結果を踏まえ、各事業場で発生することが想定される労働災害等に応じて、応急手当てに必要なものを備え付けることとされています。

(3)照度の基準の見直し(2022年12月1日施行)

これまで、事務作業をする作業面の明るさについて、「精密な作業」「普通の作業」「粗な作業」の3区分に応じて基準が設定されていました。
今回の改正により、区分と基準が以下のように変更となります。
<従来> <改正>
作業区分 基準   作業区分 基準
精密な作業 300ルクス以上 }→ 一般的な事務作業 300ルクス以上
普通の作業 150ルクス以上
粗な作業 70ルクス以上 付随的な事務作業 150ルクス以上
「一般的な事務作業」とは改正前の「精密な作業」と「普通の作業」に該当する作業、「付随的な事務作業」とは、改正前の「粗な作業」に該当する作業のことをいいます。
なお、個々の事務作業に応じた適切な照度については、作業ごとにJIS Z9110などの基準を参照して定めることとされています。精密な作業を行なうときはより高い照度を定めるなど、状況に応じて適切に判断しましょう。


そもそも、トイレの設置基準や照度基準を知らなかったという方もいるかもしれませんが、職場環境を快適に保つことは、従業員のモチベーションにもつながります。
この改正をきっかけとして、自社の労働衛生について、衛生委員会等も活用しながら話し合ってみてはいかがでしょうか。
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連載「人事労務News&Topics」

執筆者プロフィール

矢島志織氏(特定社会保険労務士)
社会保険労務士法人 志‐こころ‐特定社労士事務所 代表社員/KOKORO株式会社代表取締役。SEとして人事系システム開発に従事後、中小企業や上場企業の人事部を経験し、勤務社労士を経て独立。豊富な現場経験を強みに、企業全体の労務リスクを分析し、人事労務DD、IPO支援、人事制度、就業規則の見直し等を行う。また現場の声を聞きながら、人事労務セミナーや企業研修講師を行う等、多数の講演実績あり。著書として『労働条件通知書兼労働契約書の書式例と実務』(日本法令)、『IPOの労務監査 標準手順書』(日本法令)など。
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