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2022年度税制改正大綱の概要と改正ポイント

2021年12月17日更新

サポートクラブ 税務News&Topics

2022年度税制改正大綱の概要と改正ポイント

[田中康雄氏(税理士)]

2022年度税制改正大綱が2021年12月10日に公表されました。
今般の税制改正大綱では、新型コロナウイルス感染症への対応に万全を期しつつ、新しい資本主義の実現に取り組み、積極的な賃上げや多様な利害関係者に配慮した経営を行なう企業に対し、税制面から必要な支援を講じることとしています。
本コラムでは、2022年度税制改正大綱のうち、法人課税に関する主要項目に焦点を当て、その概要を確認します。

(1)給与等の支給額が増加した場合の税額控除制度の見直し(大法人)

国内雇用者のうち新規雇用者に対する給与等の増加割合が2%以上である場合、その新規雇用者給与等支給額の15%相当額の税額控除ができる制度が、2022年4月1日から2024年3月31日までの間に開始する各事業年度においては、継続雇用者給与等支給額の増加割合が3%以上である場合、控除対象雇用者給与等支給増加額の15%相当額の税額控除ができる制度へと改組されます。
また、この場合において、継続雇用者給与等支給額の増加割合が4%以上となるときは、税額控除率に10%を加算する上乗せ措置が講じられます。
なお、教育訓練費の額の増加割合が20%以上であるときの上乗せ措置(5%相当額の上乗せ)は継続されます。


<図1 給与等の支給額が増加した場合の税額控除制度の改正>
  【改正前】 【改正後】
適用要件 ①国内新規雇用者に対して給与等を支給すること
新規雇用者給与等支給額

-新規雇用者比較給与等支給額

新規雇用者比較給与等支給額

≧2%
 
①国内雇用者に対して給与等を支給すること
継続雇用者給与等支給額

-継続雇用者比較給与等支給額

継続雇用者比較給与等支給額

≧3%
 
税額控除 控除対象新規雇用者給与等支給額×15%(原則の税額控除率)

<上乗せ措置>
教育訓練費の額-比較教育訓練費の額

比較教育訓練費の額

≧20%の場合
 

⇒原則の税額控除率に5%を上乗せ(税額控除率は20%に)

控除対象雇用者給与等支給増加額×15%(原則の税額控除率)

<上乗せ措置>
継続雇用者給与等支給額

-継続雇用者比較給与等支給額

継続雇用者比較給与等支給額

≧4%の場合
 

⇒原則の税額控除率に10%を上乗せ(税額控除率は25%に)

教育訓練費の額-比較教育訓練費の額

比較教育訓練費の額

≧20%の場合
 

⇒原則の税額控除税率に5%を上乗せ(上記の上乗せ措置と合わせ、税額控除率は最高で30%に)

控除限度額 法人税額の20%相当額 法人税額の20%相当額

※「継続雇用者給与等支給額」とは、継続雇用者(当期と前期の全期間の各月分の給与等の支給額がある雇用者で一定のものをいいます)に対する給与等の支給額をいいます。

※教育訓練費に係る上乗せ措置の適用を受ける場合の明細書等について、現行では申告書への添付を要件としていますが、これが会社保存へと見直されます。

また、これに合わせ、継続雇用者給与等支給額の増加割合が3%以上等の要件を満たす場合には、控除対象雇用者給与等支給増加額については、外形標準課税における付加価値割の課税標準から控除できることになります。

(2)所得拡大促進税制の見直し(中小企業)

中小企業に対する所得拡大促進税制については、その適用期限を1年延長したうえで、税額控除率の上乗せ措置について、図2のとおり見直しがなされます。


<図2 所得拡大促進税制の改正>
  【改正前】 【改正後】
適用要件 ①国内雇用者に対して給与等を支給すること
雇用者給与等支給額

-比較雇用者給与等支給額

比較雇用者給与等支給額

≧1.5%
 
左記、【改正前】と同じ
税額控除 控除対象雇用者給与等支給増加額×15%(原則の税額控除率)

<上乗せ措置>
雇用者給与等支給額-比較雇用者給与等支給額

比較雇用者給与等支給額

≧2.5%
 
かつ、次のいずれかを満たすこと
教育訓練費の額-比較教育訓練費の額

比較教育訓練費の額

≧10%
 

②経営力向上計画の認定を受け、計画に記載された経営力向上が確実に行われたことにつき一定の証明がされたこと

⇒原則の税額控除率に10%を上乗せ(税額控除率は25%に)

控除対象雇用者給与等支給増加額×15%(原則の税額控除率)

<上乗せ措置>
雇用者給与等支給額

-比較雇用者給与等支給額

比較雇用者給与等支給額

≧2.5%の場合
 

⇒原則の税額控除率に15%を上乗せ(税額控除率は30%に)

教育訓練費の額-比較教育訓練費の額

比較教育訓練費の額

≧10%の場合
 

⇒原則の税額控除率に10%を上乗せ(上記の上乗せ措置と合わせ、税額控除率は最高で40%に)

控除限度額 法人税額の20%相当額 法人税額の20%相当額

(3)オープンイノベーション促進税制の拡充

オープンイノベーション促進税制は、2020年度税制改正において、オープンイノベーションを目的として設立10年未満のスタートアップ企業の株式を取得する場合、その取得価額の25%を課税所得から控除できる制度として創設されました。
今回の見直しにより、出資を受けるスタートアップ企業のうち、売上高に占める研究開発費の額の割合が10%以上の赤字会社については、その設立日以後の期間要件につき、現行の10年未満から15年未満へと延長されます。
また、特定株式の継続保有要件として、その特定株式の取得日からの保有見込期間の下限について、現行の5年から3年へと短縮されます。
これに伴い、所得控除を受けるために特別勘定として経理された部分につき取崩し事由に該当することとなった場合に、その特別勘定の金額を取り崩して益金算入する期間についても3年に短縮されます。
あわせて、本税制の適用期限が2年延長されます。

(4)地方拠点強化税制の見直しと延長

地方活力向上地域等において特定建物等を取得した場合の特別償却又は税額控除制度(いわゆる「オフィス減税」)、同地域等において雇用者の数が増加した場合の税額控除制度(いわゆる「雇用促進税制」)について、それぞれ次の見直しを講じたうえで、適用期限が2年延長されるとともに、その他所要の整備が行なわれます。

①オフィス減税
適用対象となる特定建物等については、地方活力向上地域等特定業務施設整備計画の認定を受けた日から同日の翌日以後2年を経過する日までの間に取得等をし、これを事業の用に供したものが対象とされていますが、その期間が3年へと延長されます。
また、中小企業者以外の法人(たとえば、大法人など)の取得価額要件については、現行の2,000万円以上から2,500万円以上に引き上げられます。


②雇用促進税制
地方事業所基準雇用者数のうち、有期雇用またはパートタイムである新規雇用者を除いた数が2名以上であること、という要件が廃止されます。
また、対象雇用者の範囲に、整備計画の認定の日以後に特定業務施設以外の施設で新たに雇用された無期雇用かつフルタイムの要件を満たす雇用者で、同日を含む事業年度終了の日において特定業務施設に勤務する者を加えるとともに、有期雇用またはパートタイムである転勤者が除外されます。

(5)5G導入促進税制の見直しと延長

2020年度税制改正において創設された認定特定高度情報通信技術活用設備を取得した場合の特別償却又は税額控除制度について、「デジタル田園都市国家構想」の実現に向け、それぞれ次の見直しを講じたうえで、適用期限が3年延長されます。

・特定基地局について、その要件に5G高度特定基地局を加えるとともに、開設計画に係る特定基地局の開設時期が属する年度より前の年度に開設されたものであること、という要件を廃止

・ローカル5Gシステムについては、システムの用途が、その特性を活用した先進的なデジタル化の取組みであるものに限定

・補助金等の交付を受けたものは除外

また、一定の周波数の電波を使用する無線設備の要件について見直しを行なうとともに、投資の前倒しを促進するため、税額控除率は以下のとおり段階的に引き下げられることになります。

・2022年4月1日から2023年3月31日までの間に事業の用に供したもの…15%(条件不利地域以外の地域内において事業の用に供した特定基地局の無線設備は9%)

・2023年4月1日から2024年3月31日までの間に事業の用に供したもの…9%(条件不利地域以外の地域内において事業の用に供した特定基地局の無線設備は5%)

・2024年4月1日から2025年3月31日までの間に事業の用に供したもの…3%

(6)交際費等の損金不算入制度と特例の適用期限の延長

交際費等の損金不算入制度について、その適用期限が2年延長されるとともに、中小法人に係る損金算入の特例も見直しを講じることなく、そのまま適用期限が2年延長されます。

(7)その他

・電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存への円滑な移行のための宥恕措置の整備として、2023年12月31日までの期間は、当該電子取引については出力書面等による保存を可能とする経過措置が講じられます。

・少額の減価償却資産の取得価額の損金算入制度、一括償却資産の損金算入制度、中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例について、その対象資産から、貸付け(主要な事業として行なわれるものを除きます)の用に供した資産等が除外されます。

・中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例については、上記のとおり対象資産を見直したうえで、その適用期限が2年延長されます。

・外形標準課税適用法人に対しては、法人事業税の所得割の計算において軽減税率適用法人に該当しないものとして、所得が800万円以下の部分についても標準税率として一律1%が適用されます。

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執筆者プロフィール

田中康雄氏(税理士)
税理士法人メディア・エス、社員税理士。慶應義塾大学商学部卒業。法人税、消費税を専門とし、上場企業から中小企業まで税務業務を担当。資産税関連も含め税務専門誌に多数執筆。主要著書『ケース別「事業承継」関連書式集』(共著、日本実業出版社)、『設備投資優遇税制の上手な使い方[第2版]』(税務経理協会)、『こんなに使える試験研究費の税額控除』(税務経理協会)。
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