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「男女の賃金の差異」の情報公表が義務化されました!

2022年7月25日更新

人事労務News&Topics

「男女の賃金の差異」の情報公表が義務化されました!

[矢島志織(特定社会保険労務士)]
女性活躍推進法に関する制度改正により、労働者が301人以上の事業主を対象に「男女の賃金の差異」の情報公表が義務化されました。
本コラムでは、改正内容について詳しく説明します。

(1)改正の内容

日本における男女間の賃金格差は、長期的にみると縮小傾向にありますが、他の先進国と比較すると依然として格差が大きい状況です。
さらなる格差の縮小を図るために、常時雇用する労働者が301人以上の事業主を対象として、2022年7月8日に女性活躍推進法に関する制度改正がなされ、「男女の賃金の差異」を公表することが義務となりました。

従来から、女性活躍推進法において、常時雇用する労働者が301人以上の事業主は、「女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供」に関する8項目から1項目を選択し、さらに「職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備」に関する7項目から1項目を選択し、情報を公表する必要があります。
今回の改正により、「女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供」に関する項目に「男女の賃金の差異」が加わり、「男女の賃金の差異」は、必ず公表しなければならない項目となりました。
したがって、改正後は、「女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供」に関する1項目(8項目から選択)+「⑨男女の賃金の差異」と、「職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備」に関する1項目(7項目から選択)の計3項目の公表が必要となります。


<「女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供」の項目>

①採用した労働者に占める⼥性労働者の割合

②男⼥別の採用における競争倍率

③労働者に占める⼥性労働者の割合

④係⻑級にある者に占める⼥性労働者の割合

⑤管理職に占める⼥性労働者の割合

⑥役員に占める⼥性の割合

⑦男⼥別の職種または雇用形態の転換実績

⑧男⼥別の再雇用または中途採用の実績

【新設】
+⑨男女の賃金の差異(必須)
<「職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備」の項目>

①男⼥の平均継続勤務年数の差異

②10事業年度前およびその前後の事業年度に採用された労働者の男⼥別の継続雇用割合

③男⼥別の育児休業取得率

④労働者の一⽉当たりの平均残業時間

⑤雇用管理区分ごとの労働者の一⽉当たりの平均残業時間

⑥有給休暇取得率

⑦雇用管理区分ごとの有給休暇取得率

(2)賃金の算出方法

まず、「全労働者」「正規雇用労働者」「非正規雇用労働者」の3区分で、男女別に人数と賃金を分類します。
次に、各分類における対象者の総賃金を人数で割って、平均の年間賃金額を算出し、算出された平均の年間賃金額について、男性に対する女性の割合を算出します。

「正規雇用労働者」は、期間の定めなくフルタイム勤務する労働者をいい、「非正規雇用労働者」は、パートタイム労働者(1週間の所定労働時間が正規雇用労働者に比べて短い労働者)と有期雇用労働者をいいます。
  女性 男性 <公表する割合>
正規雇用
労働者
<女性・正規の平均年間賃金>
総賃金/人員数=平均年間賃金①
<男性・正規の平均年間賃金>
総賃金/人員数=平均年間賃金②

×100%
正規雇用の男女の賃金の差異
非正規雇用
労働者
<女性・非正規の平均年間賃金>
総賃金/人員数=平均年間賃金③
<男性・非正規の平均年間賃金>
総賃金/人員数=平均年間賃金④

×100%
非正規雇用の男女の賃金の差異
すべての
労働者
<女性の平均年間賃金>
総賃金/人員数=平均年間賃金⑤
<男性の平均年間賃金>
総賃金/人員数=平均年間賃金⑥

×100%
全労働者の男女の賃金の差異

*「男女の賃金の差異の算出方法等について」(厚生労働省) をもとに作成

(3)情報の公表、時期

情報の公表にあたっては、厚生労働省が運営する「女性の活躍推進企業データベース」や自社ホームページの利用その他の方法により、求職者等が容易に閲覧できるようにする必要があります。

<公表イメージ>
  男女の賃金の差異
(男性の賃金に対する女性の賃金の割合)
すべての労働者 XX.X%
うち正規雇用労働者 YY.Y%
うちパート・有期労働者 ZZ.Z%
(注)対象期間:○○事業年度(○年○月○日~○年○月○日)

*「男女の賃金の差異の算出及び公表の方法について」(厚生労働省)をもとに作成

また、公表の時期は、各事業年度が終了した後、おおむね3か月以内とされています。
2022年7月8日以後に終了する事業年度から対象になるため、初回の公表については、たとえば次のようになります。
・2022年7月末に事業年度が終了する事業主おおむね10月末まで
・2022年8月末に事業年度が終了する事業主おおむね11月末まで
・2022年9月末に事業年度が終了する事業主おおむね12月末まで
男女の賃金格差の解消は、企業規模を問わず、大きな課題となっています。今回の改正は、労働者が301人以上の事業主を対象としていますが、対象ではない事業主も「男女の賃金の差異」について分析を行ない、自社の状況把握に取り組んでみてはいかがでしょうか。
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連載「人事労務News&Topics」

執筆者プロフィール

矢島志織氏(特定社会保険労務士)
社会保険労務士法人 志‐こころ‐特定社労士事務所 代表社員/KOKORO株式会社代表取締役。SEとして人事系システム開発に従事後、中小企業や上場企業の人事部を経験し、勤務社労士を経て独立。豊富な現場経験を強みに、企業全体の労務リスクを分析し、人事労務DD、IPO支援、人事制度、就業規則の見直し等を行う。また現場の声を聞きながら、人事労務セミナーや企業研修講師を行う等、多数の講演実績あり。著書として『労働条件通知書兼労働契約書の書式例と実務』(日本法令)、『IPOの労務監査 標準手順書』(日本法令)など。
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