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絵画などの美術品等の減価償却は取得価額「100万円」が分岐点!

2022年7月20日更新

サポートクラブ 税務News&Topics

絵画などの美術品等の減価償却は取得価額「100万円」が分岐点!

[田中康雄氏(税理士)]
本社建物のエントランスや会議室、役員室などに飾るため、絵画や彫刻、工芸品などの美術品等を法人が購入するケースもあるでしょう。
美術品等は事業と直接の関係がなく、また機械や器具備品のような一般的な固定資産のように、時の経過とともにその価値が減価するようなものでもありません。そのため、税務上において、美術品は非償却資産の性格を持ち合わせています。
しかし、美術品等のうち一定のものについては、通達の改正によって2015年(平成27年)1月1日以降、「減価償却資産にもなり得る」という取扱いが示されました。
そこで本コラムでは、当時の改正内容を振り返るとともに、改めてその取扱いを確認することにします。

改正前の取扱い

改正前の通達では、美術品等が減価償却資産に該当するか否かは、美術関係の年鑑等に登載されている作者の制作に係るものかどうかや、その取得価額が20万円未満であるかどうかにより判定することとし、かなり限定的といえますが、一部の美術品等を減価償却の対象として取り扱うことが示されていました。
しかし、年鑑等が複数存在して掲載基準が統一的ではないこと、また20万円という基準が低すぎるとの見解もあり、専門家の意見等を踏まえ、以下のような改正が行なわれました。

改正後の取扱い

取得価額が100万円以上である美術品等は、原則として非減価償却資産として取り扱い、例外的に「時の経過によりその価値が減少することが明らかなもの」は、減価償却資産として取り扱います。
裏を返せば、取得価額が100万円未満の美術品等は、原則として減価償却資産に該当し、100万円未満であっても時の経過によりその価値が減少しないものは、非減価償却資産として取り扱うということになります。
なお、減価償却資産に該当する美術品等の法定耐用年数は、「器具及び備品」の室内装飾品として、それぞれの美術品等の構造や材質等に応じて次のとおりです。
・室内装飾品のうち主として金属製のもの・・・・・15年

→ 例:金属製の彫刻

・室内装飾品のうちその他のもの・・・・・・・・・8年

→ 例:絵画、陶磁器、彫刻(主として金属製のもの以外のもの)

時の経過により価値が減少することが明らかなケース

取得価額が100万円以上の美術品等であっても、時の経過により価値が減少することが明らかな場合には、例外として減価償却資産として取り扱うことができます。
この「時の経過によりその価値が減少することが明らかなもの」とは、たとえば次のすべてを満たす状況をいいます。
(1) 会館のロビーや葬祭場のホールのような不特定多数の者が利用する場所の装飾用や展示用(有料で公開されるものを除く)として取得されるものであること
(2) 移設することが困難で、当該用途にのみ使用されることが明らかなものであること
(3) 他の用途に転用すると仮定した場合に、その設置状況や使用状況から見て、美術品等としての市場価値が見込まれないものであること
なお、この例示に該当しない場合であっても、時の経過により価値が減少するかどうかは、その美術品等の実態を踏まえて個別に判断します。

改正前に取得している美術品等の取扱い

改正前に取得した美術品等については、平成27年1月1日以後最初に開始する事業年度において、改正後の通達による取扱いを適用できるかを判定し、当該事業年度を初年度として減価償却を行なうことが認められています。
改正前から保有を続けている美術品等のうち、改正当時に改正後の通達に従って減価償却資産に該当するかの判定をしなかったものは、従前の取扱いを続けることになります。今後も減価償却を開始することはできないため、注意が必要です。
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執筆者プロフィール

田中康雄氏(税理士)
税理士法人メディア・エス、社員税理士。慶應義塾大学商学部卒業。法人税、消費税を専門とし、上場企業から中小企業まで税務業務を担当。資産税関連も含め税務専門誌に多数執筆。主要著書『ケース別「事業承継」関連書式集』(共著、日本実業出版社)、『設備投資優遇税制の上手な使い方[第2版]』(税務経理協会)、『こんなに使える試験研究費の税額控除』(税務経理協会)。
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