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2023年4月より出産育児一時金の金額が50万円に増額されます

2023年2月10日更新

人事労務News&Topics

2023年4月より出産育児一時金の金額が50万円に増額されます

[矢島志織(特定社会保険労務士)]
健康保険法施行令の改正により、2023年4月より出産育児一時金の金額が改定されることが決まりました。
本コラムでは、改正内容等について詳しく解説していきます。

(1) 改正内容

出産育児一時金とは、健康保険法等に基づく保険給付として、健康保険の被保険者または被扶養者が出産した際に、出産に係る経済的負担を軽減するため、一定の金額が支給される制度です。
近年、出産費用が年々上昇するなかで、平均的な標準費用を賄えるようにする等の観点から、2023年4月以降の出産に対し、給付額が42万円から50万円へ増額改定されることが決まりました。
  産科医療補償制度の加算対象の場合 産科医療補償制度の加算対象外の場合
現行 42万円 40.8万円
2023年4月1日より 50万円 48.8万円

*産科医療補償制度とは、出生した子が脳性麻痺となり、一定の障害状態となった場合の補償制度で、分娩を取り扱う医療機関等が加入します。

出産育児一時金の給付額は、多胎出産(双子、三つ子など)の場合、多児数に応じて支給額が決定されますので、2023年4月より、双子の場合は「50万円×2=100万円」となります(産科医療補償制度の加算対象の場合)。

(2) 出産の定義と受給の手続き

健康保険で「出産」とは、妊娠4か月以上の出産を指し、具体的には、妊娠85日以上の出産(妊娠1か月は28日間として、「28日×3か月+1日=85日」)です。
妊娠85日以上であれば、死産、流産(人工流産を含みます)または早産を問わず、給付を受けることができます。
また、出産に関する給付の目的は、主として母体を保護することにあるので、父不明の私生児出産(婚外子出産)であっても支給されます。
出産育児一時金の給付を受ける際の手続きは、医療機関等が直接支払制度を利用していない場合、「健康保険出産育児一時金支給申請書」により協会けんぽ、健康保険組合等へ申請します(申請期限は、出産した日の翌日から2年)。
「直接支払制度」とは、出産育児一時金の額を限度として、医療機関等が代わりに出産育児一時金の支給申請と受取りを行なう制度で、被保険者等は医療機関等の窓口で費用を支払う必要がありません。
実務において、近年、直接支払制度を導入している医療機関等が増えており、「健康保険出産育児一時金支給申請書」を用いた手続きは、少なくなっていると感じます。

(3) 実務のポイント

今回の改定に伴い、押さえておきたい手続きは、出産費用が出産育児一時金の額より少ない場合に、その差額分を申請する手続き方法です。
協会けんぽの場合、「健康保険出産育児一時金内払金支払依頼書」と「健康保険出産育児一時金差額申請書」の2種類の申請方法があります。
差額分を早く受け取れるのが「内払金支払依頼書」、協会けんぽから支給決定通知書が届いた後に申請するのが「差額申請書」となります。
差額が発生する場合、協会けんぽから被保険者等の自宅へ支給決定通知書が届くので、「本人が知らなかった」という事態にはならないかと思いますが、産前産後休業に入る前に、人事担当者から状況に応じた手続きの案内があると、安心して休みに入ることができるでしょう。
また、出産育児一時金の申請に限らず、産前産後休業・育児休業に関する保険給付は、申請書類の種類も多いので、下記のような図解で制度を説明するのもよいでしょう。
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連載「人事労務News&Topics」

執筆者プロフィール

矢島志織氏(特定社会保険労務士)
社会保険労務士法人 志‐こころ‐特定社労士事務所 代表社員/KOKORO株式会社代表取締役。SEとして人事系システム開発に従事後、中小企業や上場企業の人事部を経験し、勤務社労士を経て独立。豊富な現場経験を強みに、企業全体の労務リスクを分析し、人事労務DD、IPO支援、人事制度、就業規則の見直し等を行う。また現場の声を聞きながら、人事労務セミナーや企業研修講師を行う等、多数の講演実績あり。著書として『労働条件通知書兼労働契約書の書式例と実務』(日本法令)、『IPOの労務監査 標準手順書』(日本法令)など。
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