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これだけは知っておきたい! 就業規則で定めるべき休職・復職の規定

2023年2月20日更新

就業規則で会社と従業員はしあわせになれるのか?

これだけは知っておきたい! 就業規則で定めるべき休職・復職の規定

[山本喜一氏(特定社会保険労務士、公認心理師、精神保健福祉士)]
休職・復職は、とてもトラブルになりやすいタイミングです。
休職に関しては、会社は安全配慮義務を考えて、体調のすぐれない労働者を休職させる必要がある一方で、「働けるにもかかわらず一方的に休職をさせられたので給料を支払え」と争われる可能性があります。
復職に関しては、働けない状態であれば、やはり安全配慮義務を考えると復職を認めるわけにはいきませんが、復職できずに退職となれば、不当解雇として争われる可能性もあります。

そもそも会社と労働者は、「労働契約」という契約をしています。労務不能(不完全)であれば、労働者の契約違反といえますから、「普通解雇事由」に該当します。一般的に、就業規則の解雇の条項には、「精神または身体の障害により、業務に堪えられないと認められたとき」等の記載があります。
一方で解雇については、労働契約法16条で「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」とされています。
労務不能は合理的な理由となり得ますが、社会的相当性も満たすことが必要です。休職制度は法的には要求されていませんが、労働者が労務不能の際に一定期間会社が待つこと(解雇の猶予)で、社会的相当性を満たす1つの要素として多くの会社で導入されています。

古い就業規則は、「骨折、手術」など治癒する時期などが比較的わかりやすいものを想定して作られていました。しかし、その記載では、メンタルヘルス不調者への対応はできないことも多く、いざというときに困ってしまう会社が多いと感じています。

メンタルヘルス不調については、本人がつらいのはもちろんのこと、会社の担当者も対応に悩みますし、見えにくいところですが、本人の家族の負担も相当なものになります。
関係者すべてが100%満足のいく対応ができるかというと難しいのが現実です。しかし、それを目指して最善の方法を検討するのは、ハードルが高いとはいえ意義のある大切なことだと思います。

会社の担当者が悩む理由として、「何をどこまで対応したらよいのか」ということがあります。その理由は、法律で「こうすればよい」という定めがないためです。
では、何を根拠に対応を検討すればよいのかというと、参考になるものとして、これまでの裁判例があります。
そこから見えてくる結論としては、メンタルヘルス不調者に対する対応は、個別性の高い事案なので、会社としてその人に合った対応を可能な限りやり尽くして、理性的な対応をするということになります。

また、会社の担当者に理解しておいて欲しいのは、少し冷たく聞こえるかもしれませんが、「会社は医療機関やボランティアではない」ということと、「上司・同僚は家族の代わりにはなれない」ということです。
会社は治療をするところではありませんし、持続的に適正な利益を生み出すことも必要です。また、最後までお世話ができるのは家族だけです。
これらを理解していないと、優しい担当者ほど心が苦しくなります。不調者への優しい気持ちや配慮はとても大切ですが、会社の対応としての線引きは重要です。その線引きのなかで、心を尽くすようにしましょう。

就業規則の休職・復職については、次の記載を確認してください。

・体調不良時の受診命令の記載

・休職命令を出せる基準(長期の欠勤を経なくても休職命令を出せるようになっているか)

・休職期間の長さ(勤続年数による段階的な記載も有用)

・休職中の賃金

・休職期間の通算(再発時の休職期間)

・復職時のルール(本人の健康情報提供、診断書の提出、会社指定医師の面談、再休職等)

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2024年5月8日(水)~5/10(金) 東京ビッグサイト
執筆者プロフィール

山本喜一氏(特定社会保険労務士、公認心理師、精神保健福祉士)
社会保険労務士法人日本人事 代表。大学院修了後、経済産業省所管の財団法人で、技術職として勤務、産業技術総合研究所との共同研究にも携わる。その後、法務部門の業務や労働組合役員も経験。社外取締役として上場も経験。上場支援、多様性、メンタルヘルス不調者、ハラスメント、問題社員対応などを得意とする。講演、執筆なども多数行っている。
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