裁量労働制には、専門業務型裁量労働制と企画業務型裁量労働制があります。今回は、専門業務型裁量労働制の改正事項などについて解説していきます。
https://www.mhlw.go.jp/content/001080850.pdf
(1) 専門業務型裁量労働制とは
専門業務型裁量労働制は、業務の性質上、業務遂行の手段や方法、時間配分などを大幅に労働者の裁量に委ねる必要があり、その業務を行なう手段などを使用者が具体的に指示することが困難な「19業務」について、その対象業務に従事する労働者の労働時間として算定される時間を労使協定で定めることで、当該時間労働したものとみなす制度です。(2) 対象業務の追加
専門業務型裁量労働制の対象業務として「19業務」が限定列挙されていますが、改正により以下の業務が追加されます。※参考:現在の専門業務型裁量労働制の対象業務(19業務)
- 新商品もしくは新技術の研究開発または人文科学もしくは自然科学に関する研究の業務
- 情報処理システムの分析または設計の業務
- 新聞もしくは出版の事業における記事の取材もしくは編集の業務または放送番組の制作のための取材もしくは編集の業務
- 衣服、室内装飾、工業製品、広告等の新たなデザインの考案の業務
- 放送番組、映画等の制作の事業におけるプロデューサーまたはディレクターの業務
- 広告、宣伝等における商品等の内容、特長等に係る文章の案の考案の業務(いわゆるコピーライターの業務)
- 事業運営において情報処理システムを活用するための問題点の把握またはそれを活用するための方法に関する考案もしくは助言の業務(いわゆるシステムコンサルタントの業務)
- 建築物内における照明器具、家具等の配置に関する考案、表現または助言の業務(いわゆるインテリアコーディネーターの業務)
- ゲーム用ソフトウェアの創作の業務
- 有価証券市場における相場等の動向または有価証券の価値等の分析、評価またはこれに基づく投資に関する助言の業務(いわゆる証券アナリストの業務)
- 金融工学等の知識を用いて行なう金融商品の開発の業務
- 大学における教授研究の業務(主として研究に従事するものに限る)
- 公認会計士の業務
- 弁護士の業務
- 建築士(一級建築士、二級建築士および木造建築士)の業務
- 不動産鑑定士の業務
- 弁理士の業務
- 税理士の業務
- 中小企業診断士の業務
(3) 導入・継続に必要な手続き
専門業務型裁量労働制を導入する場合には、労使協定に必要事項を定めたうえで、所轄労働基準監督署へ届け出ることが必要です。また、労使協定については、労働者に周知しなければなりません。2024年4月1日より、専門業務型裁量労働制を導入または継続するためには、以下の対応が必要となります。
①労働者本人の同意を得ること
②同意をしなかった労働者に対し、解雇その他不利益な取扱いをしないことを定めること
③同意の撤回に関する手続きを定めること
④同意とその撤回に関する労働者ごとの記録を保存すること
<2024年4月より労使協定で定める事項>(太字が今回の改正点)
①制度の対象とする業務
②労働時間としてみなす時間
③対象となる業務の遂行手段や時間配分などに関し、労働者に具体的な指示をしないこと
④対象となる労働者の労働時間の状況に応じて実施する健康・福祉を確保するための措置
⑤対象となる労働者からの苦情の処理のため実施する措置
⑥制度の適用にあたって労働者本人の同意を得ること
⑦制度の適用に労働者が同意をしなかった場合に不利益な取扱いをしないこと
⑧制度の適用に関する同意の撤回の手続き
⑨労使協定の有効期間
⑩労働時間の状況、健康・福祉確保措置の実施状況、苦情処置措置の実施状況、同意および同意の撤回の労働者ごとの記録を協定の有効期間中およびその期間満了後3年間保存すること
「対象業務の範囲は明確になっているか」「業務の遂行手段等の具体的な指示をしていないか」など、あらためて専門業務型裁量労働制の要件を満たしているかを確認し、2024年4月以降の継続手続きに向けて準備をしていきましょう。