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精神障害の労災認定基準に「カスタマーハラスメント」が追加

2023年9月11日更新

人事労務News&Topics

精神障害の労災認定基準に「カスタマーハラスメント」が追加

[矢島志織(特定社会保険労務士)]
業務による心理的負荷を原因とする精神障害については、「心理的負荷による精神障害の認定基準(以下、「認定基準」といいます)」が平成23年に策定されて以来、労働者を取り巻く職場環境の変化とともに改正が繰り返されています。
近年の社会情勢や精神障害の労災保険給付請求件数の増加等を鑑み、2023年9月1日付で、認定基準が改正されました。

「業務による心理的負荷評価表」へカスタマーハラスメントが追加

精神障害の労災認定基準では、「業務による心理的負荷評価表」が用いられ、具体的出来事に照らし、その出来事による心理的負荷を「弱」「中」「強」と判断する具体的例が示されています。
今回の改正により、「顧客や取引先、施設利用者等から著しい迷惑行為を受けた」(いわゆるカスタマーハラスメント)が具体的出来事として、追加されました。

*心理的負荷を「強」と判断する具体例

・顧客等から、治療を要する程度の暴行等を受けた

・顧客等から、人格や人間性を否定するような言動を反復・継続するなどして執拗に受けた

・心理的負荷としては「中」程度の迷惑行為を受けた場合であっても、会社に相談してもまたは会社が迷惑行為を把握していても適切な対応がなく、改善されなかった

*心理的負荷を「中」と判断する具体例

・顧客等から治療を要さない程度の暴行を受け、行為が反復継続していない

・顧客等から、人格や人間性を否定するような言動を受け、行為が反復・継続していない

*心理的負荷を「弱」と判断する具体例

・顧客等から、「中」に至らない程度の言動を受けた

これらの迷惑行為に至る状況、反復・継続など執拗性の状況、その後の業務への支障、会社の対応の有無等が総合的に評価されることになります。

認定要件

認定要件として、次の①、②、③のいずれの要件も満たしている場合、労災補償の対象疾病の範囲を定めている規定(労働基準法施行規則別表第1の2)に該当する業務上の疾病として取り扱われます。

①本認定基準で対象とする疾病(以下、「対象疾病」という)を発病していること

②対象疾病の発病前おおむね6か月の間に、業務による強い心理的負荷が認められること

③業務以外の心理的負荷および個体側要因(その個人が持っている脆弱性・反応性等)により対象疾病を発病したとは認められないこと

認定要件②のとおり、心理的負荷の期間として「発病前おおむね6か月」としています。
しかし、ハラスメントやいじめのように出来事が繰り返されるものについては、繰り返される出来事を一体のものとして評価することになるので、発病前6か月以内の期間について継続しているときは、開始時からのすべての行為を評価の対象とします。
さらに、出来事の起点が発病の6か月より前であっても、その出来事が継続している場合には、発病前おおむね6か月の間における状況等と評価されます。

そのほか、今回の改正概要は、以下よりご確認ください。 相手が顧客や取引先となると、対応が困難な注文などを受けたとしても我慢して業務を遂行している方もいるでしょうし、最後には自分を追い詰めてしまうかもしれません。
いかに労働者から会社へ相談できる場を提供するか。いかにお客様との関係性や状況を把握し、会社として適切な対応をしていくのか。
心理的負荷のある職場ではなく、心理的安全性の高い職場環境を作るべく、今回の改正を機に職場環境等を見直してはいかがでしょうか。
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2024年5月8日(水)~5/10(金) 東京ビッグサイト

連載「人事労務News&Topics」

執筆者プロフィール

矢島志織氏(特定社会保険労務士)
社会保険労務士法人 志‐こころ‐特定社労士事務所 代表社員/KOKORO株式会社代表取締役。SEとして人事系システム開発に従事後、中小企業や上場企業の人事部を経験し、勤務社労士を経て独立。豊富な現場経験を強みに、企業全体の労務リスクを分析し、人事労務DD、IPO支援、人事制度、就業規則の見直し等を行う。また現場の声を聞きながら、人事労務セミナーや企業研修講師を行う等、多数の講演実績あり。著書として『労働条件通知書兼労働契約書の書式例と実務』(日本法令)、『IPOの労務監査 標準手順書』(日本法令)など。
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