≫ 人事労務News&Topics :『注目の「最低賃金」―引上げ目安は過去最大となる全国平均63円!』
本コラムでは、その後の地方最低賃金審議会での審議・答申を経て決定された、最新の地域別最低賃金額をお届けします。
(1)都道府県ごとの決定状況
中央最低賃金審議会は2025年8月4日に、令和7年度の地域別最低賃金額改定「目安」を提示しました。その後、各都道府県の審議会において議論が進められ、労働局長の決定・公示を経て、正式な金額が確定しています。
2025年度は、目安額を大幅に上回る引上げを行なった都道府県や、施行時期を2026年とする都道府県もあり、例年以上に地域差が際立つ結果となりました。
以下は、2025年9月4日時点で公表されている2025年度の地域別最低賃金一覧です(発効日順)。
都道府県 | 2025年度 | 引上額 | 発効年月日(予定を含む) |
---|---|---|---|
栃木県 | 1,068円 | 64円 | 2025年10月1日 |
新潟県 | 1,050円 | 65円 | 2025年10月2日 |
千葉県 | 1,140円 | 64円 | 2025年10月3日 |
東京都 | 1,226円 | 63円 | 2025年10月3日 |
長野県 | 1,061円 | 63円 | 2025年10月3日 |
鳥取県 | 1,030円 | 73円 | 2025年10月4日 |
北海道 | 1,075円 | 65円 | 2025年10月4日 |
宮城県 | 1,038円 | 65円 | 2025年10月4日 |
兵庫県 | 1,116円 | 64円 | 2025年10月4日 |
神奈川県 | 1,225円 | 63円 | 2025年10月4日 |
滋賀県 | 1,080円 | 63円 | 2025年10月5日 |
石川県 | 1,054円 | 70円 | 2025年10月8日 |
福井県 | 1,053円 | 69円 | 2025年10月8日 |
富山県 | 1,062円 | 64円 | 2025年10月12日 |
茨城県 | 1,074円 | 69円 | 2025年10月12日 |
山口県 | 1,043円 | 64円 | 2025年10月16日 |
大阪府 | 1,177円 | 63円 | 2025年10月16日 |
香川県 | 1,036円 | 66円 | 2025年10月18日 |
岐阜県 | 1,065円 | 64円 | 2025年10月18日 |
愛知県 | 1,140円 | 63円 | 2025年10月18日 |
鹿児島県 | 1,026円 | 73円 | 2025年11月1日 |
和歌山県 | 1,045円 | 65円 | 2025年11月1日 |
広島県 | 1,085円 | 65円 | 2025年11月1日 |
埼玉県 | 1,141円 | 63円 | 2025年11月1日 |
静岡県 | 1,097円 | 63円 | 2025年11月1日 |
宮崎県 | 1,023円 | 71円 | 2025年11月16日 |
奈良県 | 1,051円 | 65円 | 2025年11月16日 |
福岡県 | 1,057円 | 65円 | 2025年11月16日 |
島根県 | 1,033円 | 71円 | 2025年11月17日 |
青森県 | 1,029円 | 76円 | 2025年11月21日 |
佐賀県 | 1,030円 | 74円 | 2025年11月21日 |
三重県 | 1,087円 | 64円 | 2025年11月21日 |
京都府 | 1,122円 | 64円 | 2025年11月21日 |
岩手県 | 1,031円 | 79円 | 2025年12月1日 |
長崎県 | 1,031円 | 78円 | 2025年12月1日 |
愛媛県 | 1,033円 | 77円 | 2025年12月1日 |
高知県 | 1,023円 | 71円 | 2025年12月1日 |
沖縄県 | 1,023円 | 71円 | 2025年12月1日 |
岡山県 | 1,047円 | 65円 | 2025年12月1日 |
山梨県 | 1,052円 | 64円 | 2025年12月1日 |
山形県 | 1,032円 | 77円 | 2025年12月23日 |
福島県 | 1,033円 | 78円 | 2026年1月1日 |
熊本県 | 1,034円 | 82円 | 2026年1月1日 |
大分県 | 1,035円 | 81円 | 2026年1月1日 |
徳島県 | 1,046円 | 66円 | 2026年1月1日 |
群馬県 | 1,063円 | 78円 | 2026年3月1日 |
秋田県 | 1,031円 | 80円 | 2026年3月31日 |
(2)2025年度の特徴
1.目安額超えの引上げ
熊本(+82円)、大分(+81円)、秋田(+80円)など、目安を大幅に上回る引上げが実施されています。地域経済の事情や物価水準の上昇が強く意識された結果です。
2.発効時期のばらつき
多くの都道府県は2025年10月から発効ですが、秋田、群馬、徳島、大分、熊本、福島は2026年発効とされています。事業者には長期的な見通しを持った対応が求められます。
3.全国1,000円超えを達成
全都道府県で最低賃金が初めて1,000円を超えました。賃金水準の「底上げ」として大きな節目といえます。
(3)実務上の留意点
1.最低賃金額以上の時給単価の確認
月給(日給月給)制の従業員は、最低賃金額を下回っていないかを確認することが必要です。確認方法は、前回のコラムをご参照ください。
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2.適用日の確認
地域別最低賃金は、事業場が属する都道府県の最低賃金が適用されます。都道府県ごとに発効日が異なるため、複数拠点を持つ企業では特に注意が必要です。
ちなみに、在宅勤務の人に適用される地域別最低賃金は、どのように考えるべきでしょうか?
通達では、場所的に分散しているものであっても、出張所、支所等で規模が「著しく小さく」組織的関連ないし、「事務能力等を勘案して一の事業という程度の独立性がないもの」については、直近上位の機構と一括して一の事業として取り扱うこととされています。
このため、在宅勤務者の居住地における地域別最低賃金ではなく、「直近上位の機構と一括して一の事業として取り扱う」ため、直近上位の事業場が属する都道府県の最低賃金が適用されます。
直近上位の事業場とは、「指揮命令がどこから出ているか」を判断基準とするとわかりやすいでしょう。
今後も政府が掲げる「全国平均1,500円」を目指した取組みが続くことが見込まれています。
“最低賃金1,500円時代”の到来に備えた戦略的な労務管理が、企業にとってますます重要になるでしょう。